ここでは、占有の訴えと同様、占有そのものに対する保護の問題を取り扱う。
具体的には、不法占有者の果実を収取する権利等である。
占有者と物の返還を受けた回復者(主に所有者)との関係についての問題ともいえる。
占有者に関する法律関係
適法占有者の場合
A所有の甲土地をBが賃借権、すなわち、適法な権原に基づいて占有していたとする。
この場合、 Bは、AB間の契約に従って、甲を利用できる。また、BがAの許可を得て甲をCに転貸していれば (612条1項)、Cから転貸料を受け取ることができる。このように、適法な占有が行われている場合、占有者Bが取得する使用利益・果実の権利関係は、AB間の契約によって定まる。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第612条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
不法占有者の場合
以下で検討するのは、A所有の甲土地をBが適法な権原に基づかずに占有している場合の法律関係である。原則論からすれば、次のように考えられる。
Aは所有権に基づき、Bに対して甲の返還を請求できる。また、Bが甲から果実を取得している場合、AはBが善意の場合には現存利益を、悪意の場合には果実とその利息の返還を請求できる (703条・704条)。 Bが故意・過失に基づき甲に損害を与えていれば、Aは不法行為に基づく損害賠償を請求できる(709条)。 逆に、Bが甲に支出した費用があり、Aにその利益が存在する場合には、その限度においてBはAに不当利得の返還を請求できる (703条)。
(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
(悪意の受益者の返還義務等)
第704条 悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
しかし、民法は不法占有者と回復者の法律関係について、特別な規定を置いている。
善意占有・悪意占有
ところで、不法占有者と回復者の法律関係を検討するに当たっては、善意占有・悪意占有という概念を理解しておく必要がある。
A所有の甲土地をBが賃借し占有していたところ、Bが死亡しCが相続人となった。CはAB間の賃貸借契約を知らず、相続によって甲が自分の所有物になったと信じ占有している。
これが善意占有の例である。売買・賃貸借など、適法な権原に基づくものと信じて行われる占有を善意占有という。
適法な権原があることを信じていない、あるいは、疑いを持ちながら行う占有を悪意占有という。この区別は、取得時効、即時取得などの場合にも意味を持つ。
ここでいう善意は、「ある事実を知らないこと」ではない。所有権などの本権に基づくと信じて物を占有することをいう。
(参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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