I 人体の構造と働き(10)
3 皮膚、骨・関節、筋肉などの運動器官
1)外皮系
身体を覆う皮膚と、汗腺、皮脂腺、乳腺等の皮膚腺、爪や毛等の角質を総称して外皮系という。
皮膚
皮膚には、主に次のような機能がある。
- 身体の維持と保護:体表面を包み、体の形を維持し、保護する(バリア機能)。
また、細菌等の異物の体内への侵入を防ぐ。爪や毛等の角質は皮膚の一部が変化してできたもので、皮膚に強度を与えて体を保護している。 - 体水分の保持:体の水分が体外に蒸発しないよう、又は、逆に水分が体内に浸透しないよう遮断している。
- 熱交換:外界と体内の熱のやり取りをする機能で、体温を一定に保つため重要な役割を担っている。体温が上がり始めると、皮膚を通っている毛細血管に血液がより多く流れるように血管が開き、体外へより多くの熱を排出する。また、汗腺から汗を分泌し、その蒸発時の気化熱を利用して体温を下げる。逆に、体温が下がり始めると血管は収縮して、放熱を抑える。
- 外界情報の感知:触覚、圧覚、痛覚、温度感覚等の皮膚感覚を得る感覚器としての機能も有している。
ヒトの皮膚の表面には常に一定の微生物が付着しており、それら微生物の存在によって、皮膚の表面での病原菌の繁殖が抑えられ、また、病原菌の体内への侵入が妨げられている。皮膚の表面に存在する微生物のバランスが崩れたり、皮膚を構成する組織に損傷を生じると、病原菌の繁殖、侵入が起こりやすくなる。生体は、それらを排除する反応として免疫機能を活性化させ、その結果、皮膚に炎症を生じ、発疹や発赤、痒み等の症状が現れることがある。
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造からなる。
表皮
表皮は最も外側にある角質層と生きた表皮細胞の層に分けられる。
角質層は、細胞膜が丈夫な線維性のタンパク質(ケラチン)でできた板状の角質細胞と、セラミド(リン脂質の一種)を主成分とする細胞間脂質で構成されており、皮膚のバリア機能を担っている。皮膚に物理的な刺激が繰り返されると角質層が肥厚して、たこやうおのめができる。
皮膚の色は、表皮や真皮に沈着したメラニン色素によるものである。
メラニン色素は、表皮の最下層にあるメラニン産生細胞(メラノサイト)で産生され、太陽光に含まれる紫外線から皮膚組織を防護する役割がある。
メラニン色素の防護能力を超える紫外線に曝されると、皮膚組織が損傷を受け、炎症を生じて発熱や水疱、痛み等の症状が起きる。また、メラノサイトが活性化されてメラニン色素の過剰な産生が起こり、シミやそばかすとして沈着する。
真皮
真皮は、線維芽細胞とその細胞で産生された線維性のタンパク質(コラーゲン、フィブリリン、エラスチン等)からなる結合組織の層で、皮膚の弾力と強さを与えている。
また、真皮には、毛細血管や知覚神経の末端が通っている。
皮下組織
真皮の下には皮下組織があり、脂肪細胞が多く集まって皮下脂肪層となっている。皮下脂肪層は、外気の熱や寒さから体を守るとともに、衝撃から体を保護するほか、脂質としてエネルギー源を蓄える機能がある。
皮膚の付属器として毛がある。毛根の最も深い部分を毛球という。毛球の下端のへこんでいる部分を毛乳頭といい、毛乳頭には毛細血管が入り込んで、取り巻く毛母細胞に栄養分を運んでいる。毛母細胞では細胞分裂が盛んに行われ、次々に分裂してできる新しい細胞が押し上げられ、次第に角化して毛を形成していく。毛母細胞の間にはメラノサイトが分布し、産生されたメラニン色素が毛母細胞に渡される。このメラニン色素の量によって毛の色が決まる。
毛根を鞘状に包んでいる毛包には、立毛筋と皮脂腺がつながっている。立毛筋は、気温や感情の変化などの刺激により収縮し、毛穴が隆起する立毛反射(いわゆる「鳥肌」)が生じる。
皮脂腺は腺細胞が集まってできており、脂分を蓄えて死んだ腺細胞自身が分泌物(皮脂)となって毛穴から排出される。皮脂は、皮膚を潤いのある柔軟な状態に保つとともに、外部からの異物に対する保護膜としての働きがある。皮脂の分泌が低下すると皮膚が乾燥し、皮膚炎や湿疹を起こすことがある。
汗腺には、腋窩(わきのした)などの毛根部に分布するアポクリン腺(体臭腺)と、手のひらなど毛根がないところも含め全身に分布するエクリン腺の二種類がある。
汗はエクリン腺から分泌され、体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じる。
精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下、顔面などの限られた皮膚に生じる。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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