新・登録販売者試験まとめノート(39)「第2章 人体の働きと医薬品 Ⅲ症状からみた主な副作用(3)

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Ⅲ症状からみた主な副作用(3)

3 体の局所に現れる副作用

1)消化器系に現れる副作用
  1. 消化性潰瘍

消化性潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜組織が傷害されて粘膜組織の一部が粘膜筋板を超えて欠損する状態であり、医薬品の副作用により生じることも多い。
消化性潰瘍になると、胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時にみぞおちが痛くなる、消化管出血に伴って糞便が黒くなるなどの症状が現れる。自覚症状が乏しい場合もあり、貧血症状(動悸や息切れ等)の検査時や突然の吐血・下血によって発見されることもある。重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

  1. イレウス様症状(腸閉塞様症状)

イレウスとは腸内容物の通過阻害された状態をいう。
腸管自体は閉塞していなくても、医薬品の作用によって腸管運動が麻痺して腸内容物の通過が妨げられると、激しい腹痛やガス排出(おなら)の停止、嘔吐、腹部膨満感を伴う著しい便秘が現れる。
腹痛などの症状のために水分や食物の摂取が抑制され、嘔吐がない場合でも脱水状態となることがある。悪化すると、腸内容物の逆流による嘔吐が原因で脱水症状を呈したり、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行する可能性がある。

小児高齢者のほか、普段から便秘傾向のある人は、発症のリスクが高い
また、下痢治癒後の便秘を放置して、症状を悪化させてしまうことがある。いずれにしても初期症状に気付いたら、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、早期に医師の診療を受けるなどの対応が必要である。

2)呼吸器系に現れる副作用

  1. 間質性肺炎

通常の肺炎が気管支又は肺胞が細菌に感染して炎症を生じたものであるのに対し、間質性肺炎は肺の中で肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織(間質)が炎症を起こしたものである。
間質性肺炎を発症すると、肺胞と毛細血管の間のガス交換効率が低下して血液に酸素を十分取り込むことができず、体内は低酸素状態となる。そのため、息切れ・息苦しさ等の呼吸困難、空咳(痰の出ない咳)、発熱等の症状を呈する。

一般的に、医薬品の使用開始から1~2週間程度で起きることが多い。息切れは、初期には登坂等の運動時に感じられるが、病態が進行すると平地歩行や家事等の軽労作時にも意識されるようになる。
必ずしも発熱は伴わない。

これらの症状は、かぜや気管支炎の症状と区別が難しいこともあり、細心の注意を払ってそれらとの鑑別が行われている。症状が一過性に現れ、自然と回復することもあるが、悪化すると肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなる状態)に移行することがある。重篤な病態への進行を防止するため、直ちに原因と考えられる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要がある。

  1. 喘息(ぜんそく)

原因となる医薬品(アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症成分を含む解熱鎮痛薬など)の使用後、短時間(1時間以内)のうちに鼻水・鼻づまりが現れ、続いて咳、喘鳴ぜんめい(息をするとき喉がゼーゼー又はヒューヒュー鳴る)及び呼吸困難を生じる。これらの症状は時間とともに悪化し、顔面の紅潮や目の充血、吐きけ、腹痛、下痢等を伴うこともある。内服薬のほか、坐薬や外用薬でも誘発されることがある。
合併症を起こさない限り、原因となった医薬品の有効成分が体内から消失すれば症状は寛解する。軽症例は半日程度で回復するが、重症例は24時間以上持続し、窒息による意識消失から死に至る危険もある。そのような場合には、直ちに救命救急処置が可能な医療機関を受診しなければならない。

通年性(非アレルギー性)の鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻茸(鼻ポリープ)、嗅覚異常等、鼻の疾患を合併している人や、成人になってから喘息を発症した人、季節に関係なく喘息発作が起こる人等で発症しやすい
特に、これまでに医薬品(内服薬に限らない)で喘息発作を起こしたことがある人重症化しやすいので、同種の医薬品の使用を避ける必要がある。

3)循環器系に現れる副作用

  1. うっ血性心不全、不整脈

うっ血性心不全とは、全身が必要とする量血液を心臓から送り出すことができなくなり、肺に血液が貯留して、種々の症状を示す疾患である
息切れ、疲れやすい、足のむくみ、急な体重の増加、咳とピンク色の痰などを認めた場合は、うっ血性心不全の可能性を疑い、早期に医師の診療を受ける必要がある。心不全の既往がある人は、薬剤による心不全を起こしやすい。

一方、不整脈とは、心筋の自動性や興奮伝導の異常が原因で心臓の拍動リズムが乱れる病態で、めまい、立ちくらみ、全身のだるさ(疲労感)、動悸、息切れ、胸部の不快感、脈の欠落等の症状が現れる。これらの症状が現れたときは、直ちに原因と考えられる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要がある。不整脈の種類によっては失神(意識消失)することもある。そのような場合は、生死に関わる危険な不整脈を起こしている可能性があるので、自動体外式除細動器(AED)の使用を考慮するとともに、直ちに救急救命処置が可能な医療機関を受診する必要がある。
代謝機能の低下によって発症リスクが高まることがあるので、腎機能や肝機能の低下、併用薬との相互作用等に留意するべきである。特に、高齢者において、そのような配慮が重要である。医薬品の販売等に従事する専門家においては、医薬品を使用する本人だけでなく、その家族等にもあらかじめ注意を促しておく必要がある。

参考
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター

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