民法を学ぼう!「夫婦財産制・法定財産制(1)」

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司法・法務

夫婦の財産関係を規律する法制度を夫婦財産制という。民法は、夫婦が契約(夫婦財産契約)によってその財産関係を規律することを認めている。
ただ、この夫婦財産契約が利用されることは稀であり、ほとんどの夫婦が法定財産制に服している。

法定財産制

財産の帰属

(夫婦間における財産の帰属)
第762条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
(民法・e-Gov法令検索

762条は、夫婦間の財産の帰属について、別産制と呼ばれる制度を採用している。
別産制のもとでは、財産の帰属および管理に関して、財産法上のルールがそのまま妥当し、夫婦の一方が婚姻前から有する財産のみならず、婚姻中自己の名で得た財産も、その特有財産となる。

そして、婚姻中に取得された財産の帰属が争われる場合には、「自己の名で得た」こと、すなわち、自らに効果が帰属する権利変動原因(契約や相続)によって、当該財産を取得したことを証明した者が帰属主体と認められる。

また、夫婦間の合意で、夫が買い入れた土地の登記簿上の所有名義人を妻としただけでは、この土地を妻の特有財産と解すべきではない。(最判昭34.7.14民集 第13巻7号1023頁)

もっとも、長年の共同生活によって財産を取得した原因を明らかにできない場合には、同条2項が適用される。

夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定される。

別産制の問題点

別産制は、夫と妻がそれぞれが財産面における独立性を確保できる。

ただ、財産の帰属状況において、夫婦間に実質的な不平等が生じやすいことから、762条が採用する制度では、「両性の本質的平等」に立脚しておらず、憲法24条1項に反するのではないかが問題となる。最高裁は、

「民法七六二条一項の規定をみると、夫婦の一方が婚姻中の自己の名で得た財産はその特有財産とすると定められ、この規定は夫と妻の双方に平等に適用されるものであるばかりでなく、所論のいうように夫婦は一心同体であり一の協力体であつて、配偶者の一方の財産取得に対しては他方が常に協力寄与するものであるとしても、民法には、別に財産分与請求権、相続権ないし扶養請求権等の権利が規定されており、右夫婦相互の協力、寄与に対しては、これらの権利を行使することにより、結局において夫婦間に実質上の不平等が生じないよう立法上の配慮がなされているということができる。しからば、民法七六二条一項の規定は、前記のような憲法二四条の法意に照らし、憲法の右条項に違反するものということができない。」(最大判昭和36.9.6民集 第15巻8号2047頁)

としている。

有力説の内容と限界

種類別財産帰属説

1項にいう「婚姻中自己の名で得た財産」は、単に名義があるだけでなく、それを得るための対価などが自分のものであって、実質的にも自分のものであることを挙証できる財産に限られるとする。

そして、挙証できない限り、2項により、「その共有に属するものと推定される」とする。

しかし、共有の推定は基本的に夫婦内部にとどまるとされ、第三者との関係では、財産法上のルール通りに扱われる。さらに、夫婦間でも婚姻中は、一方が他方に対して持分に基づく権利を主張することは認められないとしている。

参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社

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