本稿では、「知的財産管理技能検定」を「知財検定」と称する。
本稿は、「知財検定2級」の出題範囲の頻出論点をまとめたものである。
特許権侵害の警告を受けた場合の対応
先ずは、「特許原簿」で、警告を受けた特許権を確認する必要がある。
特許原簿には特許権の最新情報が載っており、現在の真の権利者や、特許権が今も有効に存続しているか、警告者が正当な権利者であるか、などが調べられる。
なお、医薬品の特許は、出願から最大で25年間存続するので、(特許法67条4項)出願日から20年を経過していても、特許権が存続している場合がある。
登録前の出願をもとに警告された場合
出願公開されただけで、まだ権利化されていない特許出願に基づいて、警告を受けることがある。
この警告の目的は、「補償金請求権」を行使する条件の確保である。(特許法65条)
(出願公開の効果等)
第65条 特許出願人は、出願公開があつた後に特許出願に係る発明の内容を記載した書面を提示して警告をしたときは、その警告後特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対し、その発明が特許発明である場合にその実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の補償金の支払を請求することができる。当該警告をしない場合においても、出願公開がされた特許出願に係る発明であることを知つて特許権の設定の登録前に業としてその発明を実施した者に対しては、同様とする。
2 前項の規定による請求権は、特許権の設定の登録があつた後でなければ、行使することができない。
(略)
特許法・e-Gov法令検索
また、審査官に「この発明は、新規性の要件を満たしていない」と特許権の成立を阻む「情報提供」をすることもできる。(特許法施行規則13条の2)
特許権侵害にあたるかを確認する
特許権の権利範囲は、願書に添付された「特許請求の範囲」から定められる。自社の製品等が特許請求の範囲に記載された構成要素のすべてを備えていれば侵害となり、一つでも欠けていれば侵害とはならない。
特許発明の技術的範囲については、特許庁に対し、判定を求めることができる。(特許法71条1項)
発明の実施権があるかを確認する
(先使用による通常実施権)
第79条 特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をし、又は特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得して、特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許出願に係る特許権について通常実施権を有する。
特許法・e-Gov法令検索
警告を受けた根拠である特許発明の出願の際、現に国内において自社で独自に開発していた製品であれば、「先使用」による通常実施権が認められる。(79条)
なお、先使用に基づいて特許発明を実施する場合は、特許権者に対価を支払う必要はない。
侵害することが明らかな場合の対応
何人も、特許掲載公報の発行の日から6カ月以内に限り、特許庁長官に、特許が特定の事項に該当することを理由として特許異議の申立てをすることができる。(特許法113条)
特許が特定の事項に該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。(123条)
特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により又は当該特許権の存続期間の延長登録が延長登録無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。(104条の3)
特許異議の申立てとは
拒絶理由があるにもかかわらず、見過ごされた特許など、所定の特許異議の申立ての理由(特許法113条各号)を有する特許に対しては、特許掲載公報の発行の日から6カ月以内であれば、特許異議の申立てができる。(113条)
特許無効審判とは
所定の無効理由(特許法123条1項各号)を有する特許に対しては、その特許を無効にすることについて、「特許無効審判」を請求できる。(123条)
訂正審判とは
特許権が設定登録された後の特許請求の範囲は、権利書の役割を有しているので、原則として、その内容の訂正は容易に認められるべきではない。しかし、特許の一部に異議理由や無効理由がある場合などには、第三者に不測の損害を加えない範囲で、訂正する機会(訂正審判)が与えられている。(特許法126条)
(参考)
・「知的財産管理技能検定2級公式テキスト(改訂13版)」 知的財産教育協会 (編集) アップロード
・「知的財産管理技能検定2級完全マスター[改訂7版]1特許法・実用新案法」 アップロード知財教育総合研究所 (編集) アップロード
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