FPまとめノート18「相続時精算課税制度」

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相続 FP_F_相続・事業承継

本稿は、「ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP検定)」の1~3級(学科試験)で出題される頻出論点をまとめたものである。

今回のテーマは、「F 相続・事業承継」から「相続時精算課税制度」である。

相続時精算課税制度

相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度である。

適用対象者

贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫とされている。

適用対象財産等

贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はない。

計算方法・計算式

贈与税額の計算

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、その選択をした年分以後、特定贈与者以外の者からの贈与財産と区分して、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額を基に贈与税額を計算する。

その贈与税の額は、贈与財産の価額の合計額から、複数年にわたり利用できる特別控除額(限度額:2,500万円(※)。ただし、前年以前において、既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が限度額となります。)を控除した後の金額に、一律20%の税率を乗じて算出する。

贈与税の計算方法 (贈与額ー2,500万円)× 20%

なお、相続時精算課税を選択した受贈者が、特定贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与財産の価額の合計額から暦年課税の基礎控除額110万円を控除し、贈与税の税率を適用し、贈与税額を計算する。

(※) 相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできないので、贈与を受けた財産の価額が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要がある。

2023年度税制改正

基礎控除の創設

2024年1月1日以降の贈与により取得する財産について、現行の暦年課税の基礎控除とは別に、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が創設される。相続時精算課税制度を選択後も、年間110万円以下の贈与については、贈与税の申告は不要となる。

贈与税の計算方法 ((贈与額ー110万円)ー2,500万円)× 20%

相続税額の計算

相続時精算課税を選択した者に係る相続税額は、特定贈与者が亡くなった時に、それまでに贈与を受けた相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の価額と相続や遺贈により取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めた相続時精算課税に係る贈与税相当額を控除して算出する。
その際、相続税額から控除しきれない相続時精算課税に係る贈与税相当額については、相続税の申告をすることにより還付を受けることができる

なお、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の価額とされています。

手続き

相続時精算課税を選択しようとする受贈者(子または孫など)は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の戸籍の謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出する必要がある。

相続時精算課税は、受贈者(子または孫など)が贈与者(父母または祖父母など)ごとに選択できますが、いったん選択すると選択した年分以後特定贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することはできない。

(参考)No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁Webサイト)

出題例

3級

(56) 相続時精算課税の適用を受けた場合、特定贈与者ごとに特別控除額として累計( ① )までの贈与には贈与税が課されず、その額を超えた部分については一律( ② )の税率により贈与税が課される。
1) ① 2,000万円 ② 25%
2) ① 2,000万円 ② 20%
3) ① 2,500万円 ② 20%

3級 学科試験(2022年9月11日実施)

正解:3

相続時精算課税の適用を受けた場合、特定贈与者ごとに特別控除額として累計 2,500万円までの贈与には贈与税が課されず、その額を超えた部分については一律20%の税率により贈与税が課される。

2級

問題 52
贈与税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.個人が同一年中に複数回にわたって贈与を受けた場合、同年分の当該個人の暦年課税に係る贈与税額の計算上、課税価格から控除する基礎控除額は、受贈者1人当たり最高で110万円である。
2.贈与税の配偶者控除の適用を受けた場合、贈与税額の計算上、課税価格から基礎控除額のほかに配偶者控除として最高で3,000万円を控除することができる。
3.相続時精算課税制度の適用を受けた場合、贈与税額の計算上、課税価格から控除する特別控除額は、特定贈与者ごとに累計で2,500万円である。
4.相続時精算課税制度の適用を受けた場合、贈与税額の計算上、適用される税率は、一律20%である。

2級 学科試験(2021年5月23日実施)

正解:2

2 誤り。

贈与税の配偶者控除の適用を受けた場合、贈与税額の計算上、課税価格から基礎控除額のほかに配偶者控除として最高で2,000万円を控除することができる。

1級

《問43》 相続時精算課税制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
1) 2023年12月31日までに贈与により住宅取得等資金を取得した場合、贈与者の年齢がその年の1月1日において60歳未満であっても、受贈者は相続時精算課税制度の適用を受けることができる。
2) 相続時精算課税適用者が、2023年中にその特定贈与者から新たに贈与を受けた場合、贈与を受けた財産の金額の多寡にかかわらず、贈与税の申告書を提出しなければならない。
3) 相続時精算課税の特定贈与者の相続において、相続時精算課税を適用して贈与を受けた財産を相続財産に加算した金額が遺産に係る基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要である。
4) 養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合、養子縁組解消後にその者からの贈与により取得した財産については、暦年課税が適用される。

1級 学科試験<基礎編>(2021年9月12日実施)改題

正解:4

1 正しい。

令和5年(2023年)12月31日までに、父母または祖父母などからの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭(住宅取得等資金)を取得した場合で、一定の要件を満たすときには、贈与者がその贈与の年の1月1日において60歳未満であっても相続時精算課税を選択することができる。
(参考)No.4503 相続時精算課税選択の特例(国税庁Webサイト)

2 正しい。

なお、2024年1月1日以降に贈与により取得する財産から、相続時精算課税制度に110万円の基礎控除が設けられ、110万円以下の贈与は申告が不要となる。

3 正しい。

4 誤り。

養親から相続時精算課税を適用して贈与を受けた養子が、養子縁組の解消により、その特定贈与者の養子でなくなった場合でも、養子縁組解消後にその者からの贈与により取得した財産については、引き続き相続時精算課税が適用される。

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