今回のテーマは、「物権の種類」である。
物権法定主義
物権は、民法その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。(民法175条)
→物権法定主義
⇔債権は、私的自治の原則により、自由に創ることができる。
物権は、直接性、絶対性、排他性を備える権利であり、当事者が自由に創り出せると、第三者が安心して物を取引できなくなる。
民法上の物権
所有権
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。(206条)
→支配の全面性が特徴である。
制限物権
所有権と違い、物に対する支配が一部に限られている物権である。これらは、他人の所有物の上に成立し、その所有権の権能を制限する効力を有する。
なお、所有権と制限物権では権利の内容が異なるため、「物権の排他性の原則」には抵触しない。
用益物権
用益物権は、土地に設定される物権である。
地上権
地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。(265条)
永小作権
永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。(270条)
地役権
地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。(280条)
入会権
共有の性質を有しない入会権については、各地方の慣習に従うほか、この章の規定を準用する。(294条)
担保物権
債権を担保する目的で、他人の物を支配する物権を「担保物権」という。
留置権
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。(295条1項)
先取特権
先取特権者は、民法その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。(303条)
質権
質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。(342条)
抵当権
抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。(369条1項)
地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。(同条2項)
なお、抵当権には、根抵当権がある。
抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。(398条の2)
占有権
民法は、「人が物を占有している状態」そのものを保護するため、その人に「占有権」を与えた。
占有権は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって取得する。(180条)
慣習法上の物権
社会における取引の発展に伴い、物に対する支配についても様々なニーズが出てくる。
ところが、物権法定主義を厳守すると、例えば「譲渡担保権」という慣習として成立した物権を新たに創設することはできない。
そこで、物権法定主義の採用理由に照らし、①所有権に対する不合理な制約とならず、②権利の内容が明確になっていて、その存在を外部に公示する方法が整っているならば、慣習法上の権利にも物権としての効力を認めてよいと解されている。
これによって、譲渡担保権のほか、根抵当権や仮登記担保権が、担保物権の一種として承認されている。
さらに、判例は、「温泉専用権」や「流水使用権」という慣習法上の権利にも、物権と同様の効力を認めている。
(参考文献)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ)(日本評論社)、C-Book 民法II〈物権〉 改訂新版(東京リーガルマインド)
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