民法を学ぼう!「動産物権変動(17)動産物権変動における公示と公信(3)

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司法・法務

動産物権変動における公示と公信(3)

公示の原則と公信の原則との関係(2)

①Aは、Bから、Bが 所有する物を買い受けた。 その後、 Bは、 Cに対しても、その物を売却した。
②Aは、Bに対し、 自分が所有する物を賃貸して、これを引き渡した。
その後、Bは、その物が自分の物であるとして、そのことを過失なく信じているCにその物を売却した。

(2)178条の規定と192条の規定との関係

動産物権変動に関する現在の法状況を否定的にとらえるときは、次のような対処をすることが考えられる。

178条の規定と192条の規定との区別の明確化

一方では、 178条の規定の適用領域を確保することで、 178条の規定と192条の規定との区別を明確化することが考えられる。これまでみてきた解釈論のうち、次に掲げる見解は、この方向性に位置づけることができる。

第1は、 178条の 「引渡し」 から、 占有改定による引渡しを除くものである 。
この理解によれば、 ①では、AとCとの間の優劣は、 現実の引渡しの先後によって定まる。
この場合には、 Aが178条の規定によりBから所有権を取得したことを第三者であるCに対抗することができれば、Cが192条の規定により保護される余地はない。
Bは、甲の占有を有しないからである。

第2は、192条の規定の適用範囲を限定する解釈論である。 178条の「引渡し」に占有改定が含まれるとしても、 192条の規定の適用範囲が狭められれば、 それだけ178条の規定による優劣の決定が尊重される。この方向性をとるならば、占有改定による即時取得は、これを否定すべきこととなる。

178条の規定と192条の規定との内容の平準化

他方では、 178条の規定と192条の規定との内容を平準化することを目指す方向性が考えられる。平準化の方法としては、 178条の規定の解釈論において、 192条の規定とのバランスを考慮するものと、 192条の規定の解釈論において、 178条の規定の基礎に据えられた考え方を取り込むものとがある。

前者に属するのは、178条の「第三者」の主観的範囲について、背信的悪意者排除論をとらずに、 これを善意無過失の第三者に限定する見解である。 この見解は、 ① が ②と同じように解決されている事態を意識して、178条の「第三者」の主観的範囲を192条の規定に準じて解釈するものである。

これに対し、後者に属するのは、占有改定による即時取得についての類型論である。 この見解によれば、②については、否定説をとるべきであるものの、①については、 折衷説をとるべきであるとされる。 ①では、AとC との間の優劣は、178条の規定が本来その適用を予定している関係、すなわち対等な競争者間の関係を規律するルールによって定められるべきものと考えられるからである。

(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第178条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。

(即時取得)
第192条 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
(民法・e-Gov法令検索)

参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社

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