本稿は、「知的財産管理技能検定(知財検定という)」の3級の出題範囲の頻出論点をまとめたものである。
知的財産関係の法律と保護対象
法律 | 保護対象 |
---|---|
特許法 | 技術に対する「アイデア」(発明) |
実用新案法 | 物品の形状、構造等の「考案」 |
意匠法 | 工業的な物品等の「デザイン」(意匠) |
商標法 | 商品やサービスに使用する「マーク」(商標) |
著作権法 | 文芸、美術、音楽等の創作的な「表現」(著作物) |
種苗法 | 植物の「新品種」 |
不正競争防止法 | 商品等表示、商品形態、営業秘密等 |
独占禁止法 | 私的独占、不当な取引制限、不公平な取引方法を禁止 |
特許法
特許法の目的
発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。(特許法1条)
発明とは
「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。(特許法2条1項)
特許要件
特許要件とは、発明が
- 産業上利用できる発明であること(産業上の利用可能性)
- 新しいものであること(新規性)
- 容易に考え出すことができないこと(進歩性)
- 先に出願されていないこと(先願主義)
- 公序良俗に反する発明や公衆衛生を害する発明でないこと
という要件のことである。
「発明」であっても、「産業上利用できない発明」は、特許法で保護されない。
なお、工業的に生産できる必要はない。
特許出願の手続き
- 発明者は自然人に限られ、会社等の法人がなることはできない。
- 複数人が発明をした場合、その各人が共同発明者となる。
- 会社の従業員が職務として発明した場合、原則として、職務発明となり、特許を受ける権利はその従業員に帰属する。なお、従業員が会社に特許を受ける権利や特許権を譲渡すると金銭その他経済上の利益を会社から受けることができる。
特許出願時に提出する書類
- 願書
- 明細書
- 発明の名称
- 図面の簡単な説明
- 発明の詳細な説明(当業者が実施できる程度に、明確かつ十分に記載しなければならない。)
- 特許請求の範囲(発明は、明細書の「発明の詳細な説明」に記載したもので、明確であり、請求項ごとに簡潔に記載しなければならない。)
- 図面(必要がある場合)
- 要約書
国内優先権の主張を伴う特許出願に関する期間
出願 | 先の出願日から1年以内 |
出願公開 | 先の出願日から1年6か月を経過したとき |
出願審査請求 | 後の出願日から3年以内 |
存続期間 | 後の出願日から20年を経過するまで |
特許出願後の手続き
- 特許出願を行うと、原則、その出願日から1年6か月経過後に「公開特許公報」に掲載され、特許出願の内容が公開される。
- この公開時期は、特許出願人による出題公開の請求によって、早めることができる。
なお、出題公開の請求は、取り下げることはできない。 - 出題審査請求は、特許出願の日から3年以内に行われなければならない。
なお、誰でも出題審査請求できるが、いったん請求すると取り下げることはできない。 - 一定の条件に該当すれば、優先的に審査される、早期審査制度や優先審査制度がある。
- 拒絶理由通知を受けた場合は、意見書や手続補正書を提出する。
- 出願の分割や、実用新案登録出願や意匠登録出願に変更することも可能。(商標登録出願には変更できない。)
特許権の管理と活用
- 特許査定の謄本の送達後、所定の特許料を支払い、設定登録されることによって、特許権が発生する。なお、特許権の設定登録を受けるために、特許査定の謄本の送達があった日から30日以内に1~3年分の特許料を一時に納付しなければならない。
- 特許権の存続期間は、特許出願の日から20年間である。
- 特許権者は、特許発明を自ら実施するだけでなく、第三者に特許発明の実施を認めることができる。これを実施権(ライセンス)といい、ライセンス方法には「専用実施権」と「通常実施権」がある。専用実施権の設定は、特許庁に登録しなければ効力を生じない。
- 特許権者の意思に基づかない通常実施権として、職務発明や先使用権がある。
特許権の侵害と救済
侵害を発見した場合の対応(特許権者側)
- 特許の有効性の確認
- 警告書の送付
- 民事上の請求(権利行使)
- 差止請求
- 損害賠償請求
- 不当利得返還請求
- 信用回復措置請求
侵害であると警告された場合の対応(実施者側)
- 特許原簿を確認
- 特許に無効理由があるかを確認
- 「特許無効審判の請求」または、「実施の中止」など
なお、特許無効審判は、利害関係人のみ請求できる。
「特許掲載公報」の発行日から6か月以内であれば、誰でも「特許異議の申し立て」をすることができる。
特許権を侵害する者に対しては、10年以下の懲役もしくは、1000万円以下の罰金が刑事罰として科され、場合によっては、両方が適用されることもある。
実用新案法
実用新案法の保護対象は、考案であり、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とされている。
「方法の考案」は、実用新案登録を受けることができない。
存続期間は出願日から10年で終了する。
権利行使するには、相手方に実用新案技術評価書を提示して警告しなければならない。
意匠法
意匠法の保護対象と登録要件
「意匠」とは、「物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの」をいう。
意匠登録の要件
- 工業上利用できる意匠であること(工業上利用可能性)
- 新しい意匠であること(新規性)→判断基準は「出願時」
- 容易に創作できる意匠ではないこと(創作非容易性)→判断は「当業者」
- 先に出願されていないこと(先願主義)
- 意匠登録を受けることができない意匠に該当しないこと(公序良俗に反する意匠など)
意匠登録を受けるための手続き
意匠登録を受ける権利は、自然人のみに与えられ、法人には認められない。
意匠登録を受けようとする者は、願書に意匠登録を受けようとする意匠を記載した図面を添付して特許庁長官に提出しなければならない。(一意匠一出願の原則)
特許法と異なり、出願公開制度も出願審査請求制度もない。
特殊な意匠登録出願
- 部分意匠
- 動的意匠(変形するロボット玩具など)
- 組物の意匠(経済産業省令で定められている)
- 内装の意匠
- 秘密意匠(3年が限度)
意匠権の管理と活用
- 意匠登録出願について、登録査定を受け、登録査定の謄本の送達日から30日以内に第1年分の登録料の納付をし、意匠権の設定登録がされると、意匠権が発生する。
- 登録料の納付と同時に秘密意匠の請求をすることができる。
- 意匠権の存続期間は、意匠登録出願の日から25年で終了する。なお、特許法と異なり、存続期間を延長することはできない。
- ライセンス方法には、専用実施権と通常実施権がある。
意匠権者の意思に基づかない通常実施権
- 会社に勤務する従業者が職務創作した場合、会社には通常実施権が認められる
- 先使用による通常実施権
意匠権の侵害と救済
意匠権の効力
物品等 | ||||
同一 | 類似 | 非類似 | ||
形状等 | 同一 | 同一 | 類似 | 非類似 |
類似 | 類似 | 類似 | 非類似 | |
非類似 | 非類似 | 非類似 | 非類似 |
意匠権の効力は、登録意匠と物品等が同一・類似であり、かつ形状等が同一・類似である範囲に及ぶ。
意匠権侵害を発見時の対応(意匠権者側)
意匠権侵害していると思われる意匠が、自己の登録意匠等の範囲に属していることを確認すると、損害者に警告書を送ることになる。
それでも実施をやめない場合、特許権侵害の場合と同様に、差止請求(意匠法37条1項)、損害賠償請求(民法709条)、不当利得返還請求(民法703条、704条)、信用回復措置請求(意匠法41条)をすることが可能である。
意匠権又は専用実施権を侵害した者は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科される。(意匠法69条)
意匠権侵害と警告されたときの対応(実施者側)
意匠権侵害と警告されたときには、まずは、「意匠原簿」で確認する必要がある。
実施品が、意匠権の侵害に当たると判断した場合、無効理由の有無を調べる。
そして、無効理由が存在するならば、意匠登録無効審判(意匠法48条)を請求できる。
(参考)
23~’24年版 知的財産管理技能検定®3級 テキスト&過去問題集 宇田川貴央 (著) (秀和システム)
知的財産管理技能検定3級公式テキスト[改訂14版] 知的財産教育協会 (編集) アップロード
コメント