民法トピックス(民法改正情報:相隣関係の見直し)

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今回は、来年、令和5年4月1日施行の民法改正について取り上げる。いくつかが改正されるが、本稿は「相隣関係の見直し」を扱うこととする。なお、本情報は、令和4年10月13日執筆時点のものである。

隣地使用権

現行民法
(隣地の使用請求)
第二百九条 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。

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新民法
(隣地の使用)
第二百九条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

改正のポイント

.隣地使用権の内容に関する規律の整備

  • 土地の所有者は、所定の目的のために必要な範囲内で、隣地を使用する権利を有する旨を明確化(新民法209Ⅰ)
  • 隣地使用の日時・場所・方法は、隣地所有者及び隣地使用者のために損害が最も少ないものを選ばなければならない(新民法209Ⅱ)。
  • 隣地使用に際しての通知に関するルールを整備(新民法209Ⅲ)

隣地使用が認められる目的を拡充・明確化

  1. 障壁、建物その他の工作物の築造、収去、修繕
  2. 境界標の調査・境界に関する測量
  3. 新民法233Ⅲによる越境した枝の切取り(新民法209Ⅰ)

ライフラインの設備の設置・使用権

問題点

他人の土地や設備(導管等)を使用しなければ各種ライフラインを引き込むことができない土地の所有者は、解釈上、現行の相隣関係規定等の類推適用により、他人の土地への設備の設置や他人の設備の使用をすることができると解されている。

  • 明文の規定がないため、設備の設置・使用に応じてもらえないときや、所有者が所在不明であるときなどには、対応が困難
  • 権利を行使する際の事前の通知の要否などのルールが不明確
  • 土地・設備の使用に伴う償金の支払義務の有無などのルールが不明確で、不当な承諾料を求められるケースも
新民法
(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
第二百十三条の二 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

改正のポイント

ライフラインの設備の設置・使用権に関する規律の整備

  • 他の土地に設備を設置しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない土地の所有者は、必要な範囲内で、他の土地に設備を設置する権利を有することを明文化(新民法213の2Ⅰ )
  • 他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を引き込むことができない土地の所有者は、必要な範囲内で、他人の所有する設備を使用する権利を有することを明文化(新民法213の2Ⅰ )
  • 設備の設置・使用の場所・方法は、他の土地及び他人の設備のために損害が最も少ないものに限定(新民法213の2Ⅱ )

事前通知の規律の整備

他の土地に設備を設置し又は他人の設備を使用する土地の所有者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地・設備の所有者通知しなければならない(新民法213の2Ⅲ)。

償金・費用負担の規律の整備

土地の所有者は、他の土地に設備を設置する際に次の損害が生じた場合には、償金を支払う必要あり。

  • 設備設置工事のために一時的に他の土地を使用する際に、当該土地の所有者・使用者に生じた損害(新民法213の2Ⅳ、209Ⅳ)⇒ 償金は一括払い
  • 設備の設置により土地が継続的に使用することができなくなることによって他の土地に生じた損害(新民法213の2Ⅴ)⇒ 償金は1年ごとの定期払が可能

他人が所有する設備の使用権

  • 土地の所有者は、その設備の使用開始の際に損害が生じた場合に、償金を支払う必要。⇒ 償金は一括払い(新民法213の2Ⅵ)
  • 土地の所有者は、その利益を受ける割合に応じて、設備の修繕・維持等の費用を負担(新民法213の2Ⅶ)

越境した竹木の枝の切取り

現行民法
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第二百三十三条 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
新民法
(竹木の枝の切除及び根の切取り)
第二百三十三条 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

改正のポイント

越境された土地の所有者は、竹木の所有者に枝を切除させる必要があるという原則を維持しつつ、
次のいずれかの場合には、枝を自ら切り取ることができることとする(新民法233Ⅲ)。

  1. 竹木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したが、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき
  2. 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき
  3. 急迫の事情があるとき

竹木が共有物である場合には、各共有者が越境している枝を切り取ることができる。(新民法233Ⅱ)

参考

所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)法務省のウェブサイト

法務省:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)

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