本稿は、「ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP検定)」の1~3級(学科試験)で出題される頻出論点をまとめたものである。
今回のテーマは、「F 相続・事業承継」から「財産評価(不動産)」である。
宅地の評価方式
評価方法には、「路線価方式」と「倍率方式」があり、どちらの方式を採用するかは、評価する宅地の所在地で決まるため、納税者が任意に選択できない。
地積規模の大きな宅地の評価
(1)「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる宅地
路線価地域においては、(2)のうち、普通商業・併用住宅地区および普通住宅地区に所在するものとなる。倍率地域においては、(2)のものとなる。
(2)地積規模の大きな宅地
三大都市圏において、500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては、1,000㎡以上の地積の宅地をいう((3)に該当するものを除く)。
(3)地積規模の大きな宅地から除かれるもの
- 市街化調整区域(宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域を除く)に所在する宅地
- 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区においては、300%)以上の地域に所在する宅地
- 一定の大規模工場用地
(4)地積規模の大きな宅地の評価(路線価地域)
自用地価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 各種補正率 × 規模格差補正率 × 地積
宅地の上に存する権利の評価
(1)借地権(普通借地権)
借地権の評価額 = 自用地価額 × 借地権割合
(2)貸宅地
貸宅地の評価額 = 自用地価額 × (1-借地権割合)
無償返還に関する届出がある場合
貸宅地の評価額 = 自用地価額 × 80%
(3)貸家建付地
貸家建付地の評価額 = 自用地価額 × (1-借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
(4)貸家建付借地権
貸家建付借地権の評価額 = 自用地価額 × 借地権割合 × (1-借家権割合 × 賃貸割合)
(5)使用貸借に係る宅地
使用貸借に係る宅地の評価額 = 自用地価額
出題例
3級
(60) 自用地としての価額が5,000万円、借地権割合が70%、借家権割合が30%、賃貸割合が100%の貸家建付地の相続税評価額は、( )である。
1) 1,500万円
2) 3,500万円
3) 3,950万円
2021年1月試験 学科 3級【第2問】
正解:3
貸家建付の評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合 × (1-借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)により求める。
5,000万円 × (1 – 70% × 30% × 100%) = 3,950円
2級
問題 57
宅地および宅地の上に存する権利に係る相続税における評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、評価の対象となる宅地は、借地権の取引慣行のある地域にあるものとする。また、宅地の上に存する権利は、定期借地権および一時使用目的の借地権等を除くものとする。
1.Aさんが、借地権の設定に際して通常の権利金を支払って賃借した宅地の上にAさん名義の自宅を建築して居住していた場合において、Aさんの相続が開始したときには、相続税額の計算上、その賃借している宅地の上に存するAさんの権利の価額は、借地権として評価する。
2.Bさんが所有する従前宅地であった土地を、車庫などの施設がない青空駐車場として提供していた場合において、Bさんの相続が開始したときには、相続税額の計算上、その土地の価額は、貸宅地として評価する。
3.Cさんが所有する宅地の上にCさん名義のアパートを建築して賃貸していた場合において、Cさんの相続が開始したときには、相続税額の計算上、そのアパートの敷地の用に供されている宅地の価額は、貸家建付地として評価する。
4.Dさんが、借地権の設定に際して通常の権利金を支払って賃借した宅地の上にDさん名義のアパートを建築して賃貸していた場合において、Dさんの相続が開始したときには、相続税額の計算上、その賃借している宅地の上に存するDさんの権利の価額は、貸家建付借地権として評価する。
2級 学科試験(2021年1月実施)
正解:2
2 誤り。
車庫などの施設がない青空駐車場として提供していた場合には、使用貸借に係る宅地として自用地として評価する。
1級
《問49》 財産評価基本通達上の宅地の評価における「地積規模の大きな宅地の評価」の規定(以下、「本規定」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1) 本規定における地積規模の大きな宅地とは、市街化調整区域に所在する宅地等を除き、三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の地積の宅地をいう。
2) 本規定は、路線価方式により評価する地域に所在する宅地が対象となり、倍率方式により評価する地域に所在する宅地は対象とならない。
3) 都市計画において定められた容積率が300%(東京都の特別区においては200%)以上の地域に所在する宅地は、本規定の対象とならない。
4) 本規定の適用を受ける場合の宅地の価額は、当該宅地の所在する地域、地積や地区区分に応じた規模格差補正率を用いて算出され、本規定の適用を受けない場合の価額よりも高くなる。
1級 学科試験<基礎編>(2021年1月実施)
正解:1
1 正しい。
2 誤り。
倍率方式により評価する地域に所在する宅地も対象となる。
3 誤り。
指定容積率が400%(東京都の特別区においては、300%)以上の地域に所在する宅地は、本規定の対象とならない。
4 本規定の適用を受ける場合の宅地の価額は、当該宅地の所在する地域、地積や地区区分に応じた規模格差補正率を用いて算出され、本規定の適用を受けない場合の価額よりも低くなる。
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