本稿は、「管理業務主任者試験」の出題範囲のうち、民法の頻出論点をまとめたものである。
保証
保証とは、債務を弁済すべき本人(主たる債務者)が履行しない場合、保証人がその債務を肩代わりして履行する責任を負うこと。(民法446条1項)
保証契約は、主たる債務者と保証人との契約ではなく、債権者と保証人の契約である。
なお、保証契約は、書面またはその内容を記録した電磁的記録でなければ効力を生じない。(446条2項、3項)
(保証人の責任等)
第446条 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
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保証債務
保証債務には、付従性、随伴性、補充性がある。
補充性とは、主たる債務が履行されない場合のみ、保証債務が機能すること。その内容は下記の通りである。
- 催告の抗弁権・・・債権者が、主たる債務者に催告せずに直接保証人に請求した場合、保証人が、まず主たる債務者に催告するように主張できる(452条本文)
- 検索の抗弁権・・・債権者が主たる債務者に催告した後であっても、保証人は、「主たる債務者に弁済の資力があること」、「強制執行が容易であること」を証明すれば、まずは主たる債務者の財産について執行するように主張できる(453条)
(催告の抗弁)
第452条 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。
(検索の抗弁)
第453条 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。
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保証債務の範囲
保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する。(447条)
なお、保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する。(448条1項)
また、主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。(448条2項)
主たる債務者について生じた事由
主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる。(457条1項)
(例外)主たる債務者が主たる債務について時効の利益を放棄しても、その効果は保証人には及ばない。(判例)
保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる。(同2項)
主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。(同3項)
債権者の情報提供義務
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。(458条の2)
保証人の求償権
委託を受けた保証人(受託保証人)の場合
事後請求権
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(債務の消滅行為)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、求償権を有する。(459条1項)
その範囲は以下の通りである。
- 債務の消滅行為のために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額(同条かっこ書))
- 債務の消滅行為があった日以降の法定利息(459条2項、442条2項、404条1項、2項)
- 避けることができなかった費用その他の損害の賠償(459条2項、442条2項)
(法定利率)
第404条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
2 法定利率は、年3パーセントとする。
(略)
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事前求償権
(委託を受けた保証人の事前の求償権)
第460条 保証人は、主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、次に掲げるときは、主たる債務者に対して、あらかじめ、求償権を行使することができる。
一 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
二 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
三 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。
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委託を受けない保証人(無委託保証人)の場合
主たる債務者の意思に反しない場合
求償の範囲は、無委託保証人が債務の消滅行為をした当時、主たる債務者が受けた利益が限度である。(462条1項、459条の2第1項前段)
主たる債務者の意思に反する場合
主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が求償時に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。(462条2項前段)
連帯保証
連帯保証とは、主たる債務者と連帯してその債務を保証すること。
- 連帯保証人には、催告の抗弁権(452条)、検索の抗弁権(453条)を有さない。
- 分別の利益がない
連帯保証人に生じた事由の効力(458条)
- 債権者と連帯保証人との間で、保証債務につき更改(438条)、相殺(439条1項)、混同(440条)が生じた場合は、主たる債務者にもその効力が及ぶ。
- 相対的効力の原則(441条)
連帯保証人に対する履行の請求は、主たる債務者に効力を生じない。 - 債権者と主たる債務者が別段の意思を表示していた場合、連帯保証人に生じた事由の主たる債務者に対する効力は、その意思に従う。(主たる債務者にも効力を生ずる。)
求償関係
連帯保証人が債務の消滅行為をした場合の求償関係は、保証の場合と同様である。
(参考)
らくらくわかる! マンション管理士 速習テキスト 2023年度(TAC出版)
C-Book 民法Ⅲ〈債権総論〉 改訂新版(東京リーガルマインド)
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