悪意占有者の果実返還義務
他人の所有物を、適法な権原に基づかないと知り、または疑いを持ちながら占有をする者(悪意占有者)は、果実を取得できるか。
これはもちろんできない。悪意占有者は、果実を返還し、かつ、すでに消費し、過失によって損傷し、または収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。 暴行もしくは強迫または隠匿によって占有している者も同様である(190条)。善意占有者の場合と異なり、悪意占有者に果実を帰属させるべき理由は何もないからである。
(悪意の占有者による果実の返還等)
第190条 悪意の占有者は、果実を返還し、かつ、既に消費し、過失によって損傷し、又は収取を怠った果実の代価を償還する義務を負う。
2 前項の規定は、暴行若しくは強迫又は隠匿によって占有をしている者について準用する。
回復者は悪意占有者に対して、不法行為に基づく損害賠償も請求できる (709条)。190条は、果実の返還・償還に関する規定である。それ以外に生じた損害について、回復者の損害賠償請求は妨げられない。
(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
悪意占有者が、責めに帰すべき事由によって占有物を滅失・損傷させた場合、回復者に対し損害の全部を賠償しなければならない(191条本文)。ここでも、善意占有者の場合とは異なり、悪意占有者を保護すべき理由はないからとされる。
(占有者による損害賠償)
第191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。
(参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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