Ⅲ症状からみた主な副作用(3)
3 体の局所に現れる副作用
4)泌尿器系に現れる副作用
腎障害
医薬品の使用が原因となって、腎障害を生じることがある。尿量の減少、ほとんど尿が出ない、逆に一時的に尿が増える、むくみ(浮腫)、倦怠感、発疹、吐きけ・嘔吐、発熱、尿が濁る・赤みを帯びる(血尿)等の症状が現れたときは、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、速やかに医師の診療を受ける必要がある。
排尿困難、尿閉
副交感神経系の機能を抑制する作用がある成分が配合された医薬品を使用すると、膀胱の排尿筋の収縮が抑制され、尿が出にくい、尿が少ししか出ない、残尿感がある等の症状を生じることがある。これが進行すると、尿意があるのに尿が全く出なくなったり(尿閉)、下腹部が膨満して激しい痛みを感じるようになる。これらの症状は前立腺肥大等の基礎疾患がない人でも現れることが知られており、男性に限らず女性においても報告されている。初期段階で適切な対応が図られるよう、尿勢の低下等の兆候に留意することが重要である。
膀胱炎様症状
尿の回数増加(頻尿)、排尿時の疼痛、残尿感等の症状が現れる。これらの症状が現れたときは、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、症状によっては医師の診療を受けるなどの対応が必要である。
5)感覚器系に現れる副作用
眼圧上昇
眼球内の角膜と水晶体の間を満たしている眼房水が排出されにくくなると、眼圧が上昇して視覚障害を生じることがある。
例えば、抗コリン作用がある成分が配合された医薬品によって眼圧が上昇し(急性緑内障発作)、眼痛や眼の充血に加え、急激な視力低下を来すことがある。特に眼房水の出口である隅角が狭くなっている閉塞隅角緑内障がある人では厳重な注意が必要である。
眼圧の上昇に伴って、頭痛や吐きけ・嘔吐等の症状が現れることもある。高眼圧を長時間放置すると、視神経が損傷して不可逆的な視覚障害(視野欠損や失明)に至るおそれがあり、速やかに眼科専門医の診療を受ける必要がある。
その他
医薬品によっては、瞳の拡大(散瞳)による異常な眩しさや目のかすみ等の副作用が現れることがある。
眠気と同様に、そのような症状が乗物や機械類の運転操作中に現れると重大な事故につながるおそれがあるので、散瞳を生じる可能性のある成分が配合された医薬品を使用した後は、そうした作業は避けなければならない。
6)皮膚に現れる副作用
接触皮膚炎、光線過敏症
化学物質や金属等に皮膚が反応して、強い痒みを伴う発疹・発赤、腫れ、刺激感、水疱・ただれ等の激しい炎症症状(接触皮膚炎)や、色素沈着、白斑等を生じることがある。一般に「かぶれ」と呼ばれる日常的に経験する症状であるが、外用薬の副作用で生じることもある。
接触皮膚炎は、いわゆる「肌に合わない」という状態であり、外来性の物質が皮膚に接触 することで現れる炎症である。同じ医薬品が触れても発症するか否かはその人の体質によって異なる。原因となる医薬品と接触してから発症するまでの時間は様々であるが、接触皮膚炎は医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしているのが特徴である。
アレルギー性皮膚炎の場合は、発症部位は医薬品の接触部位に限定されない。 症状が現れたときは、重篤な病態への進行を防止するため、原因と考えられる医薬品の使用を中止する。通常は1週間程度で症状は治まるが、再びその医薬品に触れると再発する。
かぶれ症状は、太陽光線(紫外線)に曝されて初めて起こることもある。これを光線過敏症という。その症状は医薬品が触れた部分だけでなく、全身へ広がって重篤化する場合がある。
貼付剤の場合は剥がした後でも発症することがある。光線過敏症が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、皮膚に医薬品が残らないよう十分に患部を洗浄し、遮光(白い生地や薄手の服は紫外線を透過するおそれがあるので不可)して速やかに医師の診療を受ける必要がある。
薬疹
医薬品によって引き起こされるアレルギー反応の一種で、発疹・発赤等の皮膚症状を呈する場合をいう。
あらゆる医薬品で起きる可能性があり、同じ医薬品でも生じる発疹の型は人によって様々である。赤い大小の斑点(紅斑)、小さく盛り上がった湿疹(丘疹)のほか、水疱を生じることもある。蕁麻疹は強い痒みを伴うが、それ以外の場合は痒みがないか、たとえあったとしてもわずかなことが多い。皮膚以外に、眼の充血や口唇・口腔粘膜に異常が見られることもある。特に、発熱を伴って眼や口腔粘膜に異常が現れた場合は、急速に皮膚粘膜眼症候群や、中毒性表皮壊死融解症等の重篤な病態へ進行することがあるので、厳重な注意が必要である。
薬疹は医薬品の使用後1~2週間で起きることが多いが、長期使用後に現れることもある。
アレルギー体質の人や以前に薬疹を起こしたことがある人で生じやすいが、それまで薬疹を経験したことがない人であっても、暴飲暴食や肉体疲労が誘因となって現れることがある。
医薬品を使用した後に発疹・発赤等が現れた場合は、薬疹の可能性を考慮すべきである。
多くの場合、原因となる医薬品の使用を中止すれば、症状は次第に寛解する。
ただし、以前、薬疹を経験したことがある人が再度同種の医薬品を使用すると、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症等のより重篤なアレルギー反応を生じるおそれがあるので、同種の医薬品の使用を避けなければならない。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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