Ⅰ精神神経に作用する薬(3)
2 解熱鎮痛薬
1)痛みや発熱が起こる仕組み、解熱鎮痛薬の働き
痛みは病気や外傷などに対する警告信号として、また、発熱は細菌やウイルス等の感染等に対する生体防御機能の一つとして引き起こされる症状である。ただし、月経痛(生理痛)などのように、必ずしも病気が原因とは言えない痛みもある。
プロスタグランジンはホルモンに似た働きをする物質で、病気や外傷があるときに活発に産生されるようになり、体の各部位で発生した痛みが脳へ伝わる際に、そのシグナルを増幅することで痛みの感覚を強めている。また、脳の下部にある体温を調節する部位(温熱中枢)に作用して、体温を通常よりも高く維持するように調節するほか、炎症の発生にも関与する。頭痛や関節痛も、プロスタグランジンによって増強される。
解熱鎮痛薬とは、発熱や痛みの原因となっている病気や外傷を根本的に治すものではなく、病気や外傷が原因で生じている発熱や痛みを緩和するために使用される医薬品(内服薬)の総称である。痛みのシグナルの増幅を防いで痛みを鎮める(鎮痛)、異常となった体温調節メカニズムを正常状態に戻して熱を下げる(解熱)、又は炎症が発生している部位に作用して腫れなどの症状を軽減する(抗炎症)ことを目的として使用される。多くの解熱鎮痛薬には、体内におけるプロスタグランジンの産生を抑える成分が配合されている。
月経痛(生理痛)は、月経そのものが起こる過程にプロスタグランジンが関わっていることから、解熱鎮痛薬の効能・効果に含まれているが、腹痛を含む痙攣性の内臓痛は発生の仕組みが異なるため、一部の漢方処方製剤を除き、解熱鎮痛薬の効果は期待できない。
2)代表的な配合成分等、主な副作用
- 解熱鎮痛成分
解熱鎮痛成分は、化学的に合成された成分と生薬成分とに大別される。
【化学的に合成された成分】
悪寒・発熱時の解熱のほか、頭痛、歯痛、抜歯後の疼痛、咽喉痛(喉の痛み)、耳痛、関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、打撲痛、骨折痛、捻挫痛、月経痛(生理痛)、外傷痛の鎮痛に用いられる。
解熱に関しては、中枢神経系におけるプロスタグランジンの産生抑制作用のほか、腎臓における水分の再吸収を促して循環血流量を増し、発汗を促進する作用も寄与している。体の各部(末梢)での痛みや炎症反応に対しては、局所のプロスタグランジン産生を抑制する作用により、それらを鎮める効果を発揮する(アセトアミノフェンの場合を除く。)。
循環血流量の増加は心臓の負担を増大させるため、心臓に障害がある場合は、その症状を悪化させるおそれがある。また、末梢におけるプロスタグランジンの産生抑制は、腎血流量を減少させるため、腎機能に障害があると、その症状を悪化させる可能性がある。肝臓においては、解熱鎮痛成分が代謝されて生じる物質がアレルゲンとなってアレルギー性の肝機能障害を誘発することがある。また、肝臓ではプロスタグランジンの産生抑制が逆に炎症を起こしやすくする可能性もあり、肝機能障害がある場合は、その症状を悪化させるおそれがある。また、成分によっては、まれに重篤な副作用として肝機能障害や腎障害を生じることがある。
プロスタグランジンには胃酸分泌調節作用や胃腸粘膜保護作用もあるが、これらの作用が解熱鎮痛成分によって妨げられると、胃酸分泌が増加するとともに胃壁の血流量が低下して、胃粘膜障害を起こしやすくなる。そうした胃への悪影響を軽減するため、なるべく空腹時を避けて服用することとなっている場合が多い。胃・十二指腸潰瘍があると、その症状を悪化させるおそれがある。
化学的に合成された解熱鎮痛成分に共通して、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群や中毒性表皮壊死融解症、喘息を生じることがある。喘息については「アスピリン喘息」としてよく知られているが、これはアスピリン特有の副作用ではなく、他の解熱鎮痛成分でも生じる可能性がある。
このほか、胎児への影響を考慮して、妊婦又は妊娠していると思われる女性に関して、使用上の注意「相談すること」の項で注意喚起がなされている。
【生薬成分】
生薬成分が解熱又は鎮痛をもたらす仕組みは、化学的に合成された成分(プロスタグランジンの産生を抑える作用)と異なるものと考えられており、アスピリン等の解熱鎮痛成分の使用を避けなければならない場合にも使用できる。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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