民法を学ぼう!「不動産物権変動・第三者の範囲(1)」

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司法・法務

今回のテーマは、「不動産物権変動・第三者の範囲(1)客観的範囲」である。

第三者の範囲

177条の第三者の範囲について、判例は制限説を採っている。(大連判明治41.12.15民録14輯1276頁)

判例によれば、第三者とは、①当事者およびその包括承継人ではなく、かつ、②不動産に関する物権変動の登記がなされていないことを主張するにあたって正当な利益を有する者とされる。

そして、制限説を採ったとして、どのような基準で第三者を制限すればよいのか。

第三者が物権取得者か債権者かといった具体的な立場について考えるのが、第三者の客観的範囲の問題である。そして、第三者が善意か悪意かに着目して考えるのが、主観的範囲の問題である。

客観的範囲

肯定例

物権取得者

所有権をはじめとして、地上権、永小作権、地役権、質権および抵当権を取得した者は、客観的な観点から第三者に該当するとされる。権利の取得原因に関してもとくに制限はない。
相続や時効取得のように、意思表示以外の原因に基づく取得であってもよい。

賃借人

・賃借権自体が争われている場合

賃借権それ自体の存在が争われている場合、判例は、賃借人は第三者に該当するという。
(大判昭和8.5.9民集12巻1123頁)

・賃借人としての権利行使が問題となっている場合

乙建物の所有者Aが賃貸借契約に基づいて、Bに乙を賃貸していたところ、AがCに乙を譲渡したとする。

Bが乙を占有していることによって賃貸借の対抗要件を備えている場合、乙の所有権が譲渡されると、賃貸人の地位も新所有者Cに移転する(605条の2第1項)。ここで、Cが賃貸人としての権利をBに対して行使しようとする場合に、結論として、判例は対抗関係であると述べ、登記が必要であるとしている。
(最判昭和49.3.19民集28巻2号325頁)

差押債権者

AがBに甲土地を譲渡したが、Bが未登記の間に、Aに対して貸金債権を有しているCが甲をAが所有するものとして、差し押さえたとする。

この場合に、Bは未登記であっても、Cに対して第三者異議の訴え(民執38条)を提起して強制執行の不許を求められるか。
判例は、差押債権者Cも177条の第三者に当たると解している。

否定例

実質的無権利者

実質的無権利者が第三者に該当しないことは当然である。

不法行為者と不法占有者

実質的無権利者に類する例として、不法行為者や占有権限のない不法占有者も該当する。

参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社

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