民法を学ぼう!「不動産物権変動・第三者の範囲(2)」

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司法・法務

今回のテーマは、「不動産物権変動・第三者の範囲(1)主観的範囲」である。

第三者の範囲

客観的範囲についてはこちらをご参照ください。↓

主観的範囲

AB間の第一譲渡の存在を知っている悪意の第二譲受人Cも177条の第三者に含まれるか。

判例は、原則として、第三者が悪意か善意かを問わない。(大判大正10.12.10民録27輯2103頁)

背信的悪意者排除論

しかし、判例は、悪意の第三者のうち、背信性を有する者について、177条の第三者から排除している。(最判昭和43.8.2民集第22巻8号1571頁)➡背信的悪意者排除論

甲土地について、Aを譲渡人、Bを第一譲受人、Cを第二譲受人とし、Cが先に登記を備えたとする。

不動産登記法5条該当者に類似する者

(登記がないことを主張することができない第三者)
第5条 詐欺又は強迫によって登記の申請を妨げた第三者は、その登記がないことを主張することができない。
 他人のために登記を申請する義務を負う第三者は、その登記がないことを主張することができない。ただし、その登記の登記原因(登記の原因となる事実又は法律行為をいう。以下同じ。)が自己の登記の登記原因の後に生じたときは、この限りでない。
不動産登記法 e-GOV法令検索)

これらに該当する第三者は、177条の第三者から排除する。

これらに直接該当するわけではないが、類似するCを、背信的悪意者として、177条の第三者から排除すべきとする見解が定着している。

CがBの登記を妨害している間に自ら登記を経由した場合が挙げられる。(最判昭和44.4.25民集23巻4号904頁)

不動産登記法5条2項に関連するケースとして、Cが第一譲渡に立会人として関わっていた場合がある。(最判昭和43.11.15民集22巻12号2671頁)

実質的な当事者性が認められる者

CがAの妻であるなど、密接な人間観関係がAC間に認められる場合、CがBとの関係で背信的悪意者として、認定されることがある。

害意を有する者

CがBに対してもともと恨みをもっているなど、害意を有しており、その目的を達成するためだけに甲の譲渡を受けて登記を具備した場合である。

近時の判例

通行地役権のケース

通行地役権の承役地が譲渡された場合において、譲渡の時に、右承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されていることがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、譲受人は、通行地役権が設定されていることを知らなかったとしても、特段の事情がない限り、地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に当たらない
(最判平成10.2.13民集第52巻1号65頁)

ただし、この判例は、背信的悪意者排除論を適用できなかったため、別の法理を用いた。
通行地役権が問題となっているケースに限定されると解すべきであろう。

所有権の時効取得のケース

甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時に,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たる
(最判平成18.1.17民集第60巻1号27頁)

背信的悪意者性を認定するにあたって悪意認定の基準を緩和したといえる。

転得者

このように、判例は、背信的悪意者を177条の第三者から除外しているが、その背信的悪意者からさらに転得者が現れた場合はどうか。

所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、甲から丙が当該不動産を二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合に、丙が背信的悪意者に当たるとしても、丁は、乙に対する関係で丁自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をもって乙に対抗することができる。
(最判平成.8.10.29民集第50巻9号2506頁)

各人ごとに背信的悪意者かどうかを判断するため、相対的構成とよばれる。

なお、丁が保護されるにあたって、丁が乙に対抗するために丁自身が登記を具備していなければならないかについて争いがある。判例は、丁の登記が完了していることを要求しているようであるが、丙が登記を備えていれば、丁は丙の登記を援用できるという見解もある。

単純悪意者排除説

悪意者も背信的悪意者でない限り、177条の第三者に該当するという判例の見解には反対説もある。
背信的悪意者排除論と区別して、単純悪意者排除説という。

この見解によれば、悪意の第三者に対しては未登記であっても対抗できることになる。

参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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