離婚は、有効に成立した夫婦関係を当事者の生存中に終了させる唯一の法定の手続きである。
離婚の方法
民法では、協議上の離婚(協議離婚)と裁判上の離婚(裁判離婚)の二本立てとなっている。
ただし、調停離婚、審判離婚という種別も存在する。
これらのうち、協議離婚は、唯一、裁判所が関与しない離婚種別である。
夫婦が離婚に合意し、その届出をすれば離婚が認められる。
協議離婚
(協議上の離婚)
第763条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。
(民法・e-Gov法令検索)
もっとも、協議だけで成立するわけでなく、届出が必要である。(764条、739条)
離婚意思の合致
協議離婚の成立には離婚意思の合致が必要である。
なお、婚姻と同様、行為能力が制限されていることを理由とする制約はない。
したがって、成年被後見人であっても単独で協議離婚することができる。(764条、738条)
離婚意思の内容
仮想離婚のケースが問題となる。
判例は、「いわゆる方便としてされた協議離婚が有効とされた事例」において、
「夫婦が事実上の婚姻関係を継続しつつ、単に生活扶助を受けるための方便として協議離婚の届出をした場合でも、右届出が真に法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであるときは、右協議離婚は無効とはいえない。」とした。(最判昭和57.3.26集民 第135号449頁)
離婚意思の存在時期
離婚意思は届出の受理時に存在していなければならない。
「合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。」(最判昭和34.8.7民集 第13巻10号1251頁)
離婚の届出
(離婚の届出の受理)
第765条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
(民法・e-Gov法令検索)
受理によって届出が完了し、離婚が成立する。
なお、戸籍事務管掌者(市区町村長)は実質的審査権を有さない。そのため、離婚の合意がないにもかかわらず、夫婦の一方が勝手に届書を作成し、市役所等に提出し、届出が受理されてしまう事態は起こりうる。これを防ぐために設けられているのが「不受理申出制度」である。
夫婦に未成年者の子がある場合
夫婦に未成年者の子がある場合は、その協議により一方を親権者と定め(819条1項)、届書に必要事項を記載しなければならない。(戸籍法76条1項)
第76条
離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他法務省令で定める事項
(戸籍法・e-Gov法令検索)
この記載を欠く場合は、届出は受理されない。
しかし、協議がなされていない場合であっても、届書に父母の一方を親権者とする旨の記載があれば、届出書は受理される。
協議離婚の無効・取消し
協議離婚の無効
協議離婚の届出をした当事者間に離婚する意思がない場合は、742条1項の類推適用により当該離婚は無効であるとされる。
(婚姻の無効)
第742条 婚姻は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
一 人違いその他の事由によって当事者間に婚姻をする意思がないとき。
二 当事者が婚姻の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、婚姻は、そのためにその効力を妨げられない。
(民法・e-Gov法令検索)
無効になるのは、当事者の一方または双方が知らない間に無断で離婚の届出がされた場合や、当事者がいったんは離婚に合意し、届書を作成したものの、届出の受理前に離婚の意思を撤回した場合などに限られる。
協議離婚の取消し
詐欺または強迫によって協議離婚をした者は、その取り消しを家庭裁判所に請求できる。(764条、747条1項)
なお、婚姻の取消しと異なり、取り消された協議離婚は、はじめから無効であったものとみなされる。
(参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社
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