民法を学ぼう!「内縁(3)」

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司法・法務

意図的に婚姻届を出さない男女に従来の準婚理論によって婚姻に準じた保護を与えることに対しては、批判的な見解が多数を占めている。 他方で、近時で同性カップルの一方が裁判において婚姻に準じた保護を求める事案が現れている。伝統的な内縁の枠組みには収まらないこれらの婚姻外の関係にどのように対応すべきかを考えてみよう。

内縁の保護要件

準婚理論は男女が夫婦共同生活を営んでいるという社会的事実を重視する考え方であるから、当事者間にそのような社会的事実が存在しなければならない。肉体関係を伴う同居がある程度の期間継続していれば、夫婦共同生活の存在が認定されるが、継続的な同居が不可欠とされているわけではない。男女関係が多様化していることを受けて、同居という形式ではなく、相互の協力という実質を重視すべきであるとの見解もある。

判例は、婚姻において、 生活事実を重視する姿勢を示しており、 当事者が 「社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する」 意思を有していることが必要であるとしている。 それゆえ、婚姻に準ずる関係である内縁においても、当事者間に婚姻をする意思のあること、すなわち社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する意思のあることが必要であると考えられている。この意思を欠く場合には、たとえ夫婦共同生活が存在していても、単なる私通ということになる。

将来的には届出をして法律上も夫婦になろうという合意がなされている場合も多いが(この場合には、婚約を伴う内縁ということになる)、 一方が婚姻の届出を拒んでいても婚姻意思が否定されるわけではない。

では、婚姻障害があるために婚姻をすることができない当事者間の内縁も婚姻に準ずる保護が認められるのだろうか。

問題となるのは、配偶者のある者が当事者となる内縁(重婚的内縁)と近親婚的内縁である。

重婚的内縁については、戦前は、公序良俗に反するものとして厳しい態度が取られたが、現在では、一夫一婦制との調整を図りながら一定の保護が認められている。

他方、 近親婚的内縁については、

 厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が,叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され,当初から反倫理的,反社会的な側面を有していたものとはいい難く,親戚間では抵抗感なく承認され,地域社会等においても公然と受け容れられ,叔父の死亡まで約42年間にわたり円満かつ安定的に継続したなど判示の事情の下では,近親者間における婚姻を禁止すべき公益的要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという厚生年金保険法の目的を優先させるべき特段の事情が認められ,上記姪は同法に基づき遺族厚生年金の支給を受けることのできる配偶者に当たる。
(最判平成19.3.8民集61巻2号518頁)

とした判例がある。

学説においては、内縁の保護要件を一律に設定するのではなく、問題となっている法的効果の内容(関係解消に伴うものか、関係維持のためのものか)や、その法的効果が誰との間で問題となっているのか (当事者間か第三者に対してか)などに応じて、 相対的に内縁保護の要否を判断すべきであるとする見解(相対的効果説) が有力である。 婚姻外の男女関係の多様性や法律関係の多面性を踏まえて弾力的な解決を図ろうとするものであるが、婚姻に準じて一律の法律効果を認めてきた従来の準婚理論の枠組みを崩すものともいうことができる。

参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社

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