公衆衛生用薬
消毒薬
感染症の防止と消毒薬
感染症は、病原性のある細菌、寄生虫やウイルスなどが体に侵入することによって起こる。
特に食中毒は、手指や食品、調理器具等に付着した細菌、寄生虫やウイルスが、経口的に体内に入って増殖することで生じる。
一般的には、石けんで十分に手洗いを行い、器具等については煮沸消毒等を行うといった対応により食中毒を防止することができる。
しかし、煮沸消毒が困難な器具等もあり、また、食中毒の流行時期や、明らかに感染者が身近に存在するような場合には、集団感染を防止するため念入りに、化学薬剤(消毒薬)を用いた処置を行うことが有効とされる。
消毒薬の使用上の注意
- 微生物を死滅させる仕組み及び効果は、殺菌消毒成分の種類、濃度、温度、時間、消毒対象物の汚染度、微生物の種類や状態などによって異なる。
- 消毒薬によっては、殺菌消毒効果が十分得られない微生物が存在し(全く殺菌消毒できない微生物もある。)
- 生息条件が整えば消毒薬の溶液中で生存、増殖する微生物もいる。
代表的な殺菌消毒成分、取扱い上の注意等
手指・皮膚の消毒のほか、器具等の殺菌・消毒にも用いられる成分
アルコール系
アルコール分が微生物のタンパク質を変性させ、それらの作用を消失させる。
成分
エタノール、イソプロパノール
- 結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対する殺菌消毒作用を示す。
- イソプロパノールでは、ウイルスに対する不活性効果はエタノールよりも低い。
- 粘膜刺激性があり、粘膜面や目の回り、傷がある部分への使用は避ける。
- 揮発性で引火しやすい。
- 広範囲に長時間使用する場合には、蒸気の吸引にも留意する必要がある。
その他の消毒成分(1)
成分
クレゾール石ケン液、ポリアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル
- 結核菌を含む一般細菌類、真菌類に対して比較的広い殺菌消毒作用を示すが、大部分のウイルスに対する殺菌消毒作用はない。
- クレゾール石ケン液は、原液を水で希釈して用いられるが、刺激性が強いため、原液が直接皮膚に付着しないようにする必要がある。
その他の消毒成分(2)
成分
クロルヘキシジングルコン酸塩
- 一般細菌類、真菌類に対して比較的広い殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスに対する殺菌消毒作用はない。
専ら器具、設備等の殺菌・消毒に用いられる成分
塩素系殺菌消毒成分
成分
次亜塩素酸ナトリウム、サラシ粉
- 強い酸化力により一般細菌類、真菌類、ウイルス全般に対する殺菌消毒作用を示す。
- 皮膚刺激性が強いため、通常人体の消毒には用いられない。
- 金属腐食性があるとともに、プラスチックやゴム製品を劣化させる。
- 漂白作用がある。
- 酸性の洗剤・洗浄剤と反応して有毒な塩素ガスが発生する。
- 吐瀉物や血液等が床等にこぼれたときの殺菌消毒にも適しているが、有機物の影響を受けやすいので、殺菌消毒の対象物を洗浄した後に使用した方が効果的である。
有機塩素系殺菌消毒成分
成分
ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸
- 強い酸化力により一般細菌類、真菌類、ウイルス全般に対する殺菌消毒作用を示す。
- 塩素臭や刺激性、金属腐食性が比較的抑えられており、プール等の大型設備の殺菌・消毒に用いられる。
誤用・事故等による中毒への対処
基本的に応急処置の後は、すみやかに医療機関に受診するなどの対応が必要である。
誤って飲み込んだ場合
- 通常は多量の牛乳などを飲ませるが、手元に何もないときはまず水を飲ませる。(中毒物質の消化管からの吸収を遅らせ、粘膜を保護するために誤飲してから数分以内に行う。)
- 自己判断で安易に吐き出させることは避ける。
誤って目に入った場合
- 流水で十分に(15分間以上)洗眼する。
- 酸やアルカリが目に入った場合は、早期に十分な水洗がされることが重要である。
- 酸をアルカリで中和したり、アルカリを酸で中和するといった処置は、熱を発生して刺激をかえって強め、状態が悪化するおそれがあるため適切ではない。
誤って皮膚に付着した場合
- 石けんを用いて流水で皮膚を十分に(15分間以上)水洗する。
- 酸やアルカリは早期に十分な水洗がなされることが重要である。
- 目に入った場合と同様、中和剤は用いない。
誤って吸入した場合
- 意識がない場合は新鮮な空気の所へ運び出し、人工呼吸などをする。
(参考)改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)、
登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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