本稿では、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」を「医薬品医療機器等法」と称する。(以下、法と略する)
医薬品の販売業の許可
許可の種類と許可行為の範囲
法第24条第1項
薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。(略))してはならない。
医薬品の販売等を行うには、薬局の開設又は医薬品の販売業の許可を受ける必要がある。
医薬品の販売業の許可については、店舗販売業の許可、配置販売業(置き薬)の許可又は卸売販売業(問屋)の許可の3種類に分けられている(法第25条)
なお、薬局における医薬品の販売行為は、薬局の業務に付随して行われる行為であるので、医薬品の販売業の許可は必要としない。
薬局の開設及び医薬品の販売業の許可は、6年ごとに、その更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う。(法第24条第2項)
販売方法
法第37条第1項
薬局開設者又は店舗販売業者は店舗による販売又は授与以外の方法により、配置販売業者は配置以外の方法により、それぞれ医薬品を販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で医薬品を貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
医薬品は、人の生命や健康に直接又は間接的に影響を与える生命関連製品であるため、安全性の見地から、露天販売や現金行商等のような、事後において医薬品の購入者等の安全性を確保すること、また、販売側の責任や所在を追及することが困難となる形態での販売又は授与を禁止する趣旨(いわゆる「売り逃げ」の防止)によるものである。
分割販売
薬局、店舗販売業及び卸売販売業では、特定の購入者の求めに応じて医薬品の包装を開封して分割販売(いわゆる「量り売り」、「零売」と呼ばれることもある。)することができる。
ただし、分割販売する場合には、分割販売する薬局開設者又は医薬品の販売業者の責任において、それぞれ表示又は記載されなければならない。
分割販売される医薬品の記載事項
- 分割販売を行う者の氏名又は名称
- 分割販売を行う薬局、店舗又は営業所の名称及び所在地 等
医薬品をあらかじめ小分けし、販売する行為は、無許可製造、無許可製造販売に該当するため、認められない。
配置販売業
配置販売業は、購入者の居宅等に医薬品をあらかじめ預けておき、購入者がこれを使用した後でなければ代金請求権を生じない(「先用後利」という)といった販売形態(行商)であるため、一般用医薬品のうち経年変化が起こりにくいこと等の基準(配置販売品目基準)に適合するもの以外の医薬品を販売等してはならないこととされている(法第31条)。
配置販売業の許可
法第30条第1項
配置販売業の許可は、一般用医薬品を、配置により販売又は授与する業務について、配置しようとする区域をその区域に含む都道府県ごとに、その都道府県知事が与えることとされている
配置販売業の許可を与えない場合(法第30条第2項)
- 許可を受けようとする区域において適切に医薬品の配置販売するために必要な基準が整っていないとき
- 申請者が薬事に関する法令等に違反し一定期間を経過していないとき
配置販売業者の責務
- 配置販売業者は、その業務に係る都道府県の区域を、自ら管理し、又は当該都道府県の区域において配置販売に従事する配置員のうちから指定したものに管理させなければならない(法第31条の2第1項)。
- 配置販売業者は、その区域管理者の意見を尊重するとともに、法令遵守のために措置を講ずる必要があるときは、当該措置を講じ、かつ、講じた措置の内容(措置を講じない場合にあつては、その旨及びその理由)を記録し、これを適切に保存しなければならない(法第31条の4第2項)。
- 配置販売業者は、区域の管理に関する業務その他の配置販売業者の業務を適正に遂行することにより、薬事に関する法令の規定の遵守を確保するために、必要な措置を講じるとともに、その措置の内容を記録し、適切に保存なければならない(法第31条の5)。
区域管理者の条件
区域管理者の設置区分
第一類医薬品を販売し、授与する区域においては薬剤師、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売し、授与する区域においては薬剤師又は登録販売者でなければならない。(法第31条の2第2項)
第二類医薬品又は第三類医薬品を販売する区域管理者の条件
登録販売者が、第二類医薬品又は第三類医薬品を販売する区域管理者になるためには、
下記の従事期間について、次の要件を満たすことが必要である。
(a:これまでの要件)
過去5年間のうち通算して2年以上
なお、2年以上とは
「月単位で計算して1か月に 80 時間以上従事した月が 24 月以上」
または
「従事期間が通算して2年以上、かつ過去5年間において合計 1,920 時間以上」
をいう。
(b:追加された要件)
過去5年間のうち通算して1年以上に加え、
毎年度受講する必要がある研修(継続的研修)および区域の管理及び法令遵守に関する追加的な研修を修了している
なお、1年以上とは
「月単位で計算して1か月に 160 時間以上従事した月が 12 月以上」
または
「従事期間が通算して1年以上、かつ過去5年間において合計 1,920 時間以上」
をいう。
従事期間
① 一般従事者として薬剤師又は登録販売者の管理及び指導の下に実務に従事した期間
② 登録販売者として業務に従事した期間
店舗販売業と同様、①、②の条件を満たす職場で、過去5年間のうち、通算して、2年以上、または1年以上(研修受講が必要)の実務経験が必要となる。
その他の区域管理者の条件
区域に関する必要な業務を遂行し、必要な事項を遵守するために必要な能力及び経験を有する者でなければならない。(法第31条の2第3項)
区域管理者の責務等
- 保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その業務に関し配置員を監督するなど、その区域の業務につき、必要な注意をしなければならない。
- 配置販売業者に対して必要な意見を書面により述べなければならない(法第31条の3)。
配置販売の従事に関する届出
配置販売業者又はその配置員は、医薬品の配置販売に従事しようとするときは、配置販売業者の氏名及び住所、配置販売に従事する者の氏名及び住所並びに区域及びその期間(規則第150条)を、あらかじめ、配置販売に従事しようとする区域の都道府県知事に届け出なければならない。(法第32条)
配置員の身分証明書
配置販売業者又はその配置員は、その住所地の都道府県知事が発行する身分証明書の交付を受け、かつ、これを携帯しなければ、医薬品の配置販売に従事してはならない。(法第33条第1項)
その他のポイント
薬局開設者又は店舗販売業者は、店舗による販売又は授与以外の方法により医薬品を販売等してはならず、同様に、配置販売業者は、配置以外の方法により医薬品を販売等してはならない(法第37条第1項)。
薬局開設者又は店舗販売業者が、配置による販売又は授与の方法で医薬品を販売等しようとする場合には、別途、配置販売業の許可を受ける必要がある。一方、配置販売業者が、店舗による販売又は授与の方法で医薬品を販売等しようとする場合には、別途、薬局の開設又は店舗販売業の許可を受ける必要がある。
また、配置販売業では、医薬品を開封して分割販売することは禁止されている(法第37条第2項)。
医薬品販売に関する法令遵守
行政庁の監視指導、苦情相談窓口
薬事監視員
厚生労働大臣、都道府県知事、保健所を設置する市(以下「保健所設置市」という。)の市長及び特別区の区長は、その職員のうちから薬事監視員を命じ、薬局及び医薬品の販売業に関する監視指導を行わせている。(法第76条の3第1項)
立入検査等
- 都道府県知事等は、薬局開設者又は医薬品の販売業者が、関係する法の規定又はそれに基づく命令を遵守しているかどうかを確かめるために必要があると認めるときは、その薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して必要な報告をさせ、又は薬事監視員に、その薬局開設者又は医薬品の販売業者が医薬品を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備若しくは帳簿書類等を検査させ、従業員その他の関係者に質問させることができる。(法第69条第2)
- 都道府県知事等は、薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して、必要な報告をさせ、又は薬事監視員に、その薬局開設者又は医薬品の販売業者が医薬品を業務上取り扱う場所に立ち入り、その構造設備若しくは帳簿書類等を検査させ、従業員その他の関係者に質問させ、無承認無許可医薬品、不良医薬品又は不正表示医薬品等の疑いのある物を、試験のため必要な最少分量に限り、収去させることができる。(法第69条第6項)
行政庁による処分
改善命令等(都道府県知事等から薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して)
- 薬局開設者又は医薬品の販売業者(に対して、その構造設備が基準に適合せず、又はその構造設備によって不良医薬品を生じるおそれがある場合においては、その構造設備の改善を命じ、又はその改善がなされるまでの間当該施設の全部若しくは一部の使用を禁止することができる。(配置販売業者を除く。)(法第72条第4項の規定に基づく改善命令、施設の使用禁止処分)
- 一般用医薬品の販売等を行うための業務体制が基準(体制省令)に適合しなくなった場合において、その業務体制の整備を命ずることができる。(法第72条の2に基づく命令)
- 法令の遵守を確保するため措置が不十分であると認める場合においては、その改善に必要な措置を講ずべきことを命ずることができる(法第72条の2の2に基づく命令)。
- 薬事に関する法令に違反する行為があった場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、その薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して、その業務の運営の改善に必要な措置を採るべきことを命ずることができる(法第72条の4第1項の規定に基づく改善命令)。
- 許可の際に付された条件に違反する行為があったときは、その条件に対する違反を是正するために必要な措置を採るべきことを命ずることができる(法第72条の4第2項に基づく改善措置命令)
- 薬局の管理者又は店舗管理者若しくは区域管理者について、その者に薬事に関する法令又はこれに基づく処分に違反する行為があったとき、又はその者が管理者として不適当であると認めるときは、その薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して、その変更を命ずることができる(法第73条の規定に基づく管理者の変更命令)。
業務停止命令等
- 都道府県知事は、配置販売業の配置員が、その業務に関し、法若しくはこれに基づく命令又はこれらに基づく処分に違反する行為があったときは、その配置販売業者に対して、期間を定めてその配置員による配置販売の業務の停止を命ずることができ、また、必要があるときは、その配置員に対しても、期間を定めてその業務の停止を命ずることができる(法第74条の規定に基づく業務停止命令)。
- 都道府県知事等は、薬局開設者又は医薬品の販売業者について、薬事に関する法令又はこれに基づく処分に違反する行為があったとき、薬局開設者又は医薬品の販売業者が禁錮以上の刑に処せられるなど、その許可の基準として求めている事項に反する状態に該当するに至ったときは、その許可を取り消し、または期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる(法第75条第1項の規定に基づく許可の取消し、業務停止命令)。
- 厚生労働大臣は、医薬品による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、薬局開設者又は医薬品の販売業者に対して、医薬品の販売又は授与を一時停止することその他保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するための応急措置を採るべきことを命ずることができる(法第69条の3の規定に基づく緊急命令)。
廃棄・回収命令等
- 厚生労働大臣又は都道府県知事等は、医薬品を業務上取り扱う者(薬局開設者、医薬品の販売業者を含む。)に対し、不正表示医薬品、不良医薬品、無承認無許可医薬品等について、廃棄、回収その他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置を採るべきことを命ずることができる(法第70条第1項の規定に基づく廃棄等の命令)
- 厚生労働大臣又は都道府県知事等は、上記命令を受けた者がその命令に従わないとき、又は緊急の必要があるときは、薬事監視員に、その不正表示医薬品等を廃棄させ、若しくは回収させ、又はその他の必要な処分をさせることができる(法第70条第2項)。
自主規制
行政庁による命令がなくても、医薬品等の製造販売業者等が、その医薬品等の使用によって保健衛生上の危害が発生し、又は拡大するおそれがあることを知ったときは、これを防止するために廃棄、回収、販売の停止、情報の提供その他必要な措置を講じなければならない。(法第68条の9第1項)
薬局開設者又は医薬品の販売業者、薬剤師その他の医薬関係者は、医薬品等の製造販売業者等が行う必要な措置の実施に協力するよう努めなければならない(法第68条の9第2項)。
(参考)
- 改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)
- 登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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