今回は、「全身的に現れる副作用」についてまとめてみました。
全身的に現れる副作用
ショック(アナフィラキシー)
特徴
- 生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種である。
- 発症後の進行が非常に速やかである。(通常、2時間以内に急変する。)
- 原因物質によって発生頻度は異なり、医薬品の場合、以前にその医薬品によって蕁麻疹(じんましん)等のアレルギーを起こしたことがある人で起きる可能性が高い。
典型的な症状
- 顔や上半身の紅潮・熱感
- 皮膚の痒(かゆ)み
- 蕁麻疹(じんましん)
- ロ唇や舌・手足のしびれ感
- むくみ(浮腫)
- 吐きけ
- 顔面蒼白(がんめんそうはく)
- 手足の冷感
- 冷や汗
- 息苦しさ・胸苦しさ
- チアノーゼ
- 呼吸困難
重篤な皮膚粘膜障害
皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群、SJS)、中毒性表皮壊死融解症(TEN、ライエル症候群)がある。
皮膚粘膜眼症候群及び中毒性表皮壊死融解症のいずれもが発生は非常にまれであるとはいえ、一旦発症すると多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがあり、また、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器等に障害が残ったりする重篤な疾患である。
特徴
- 発生は非常にまれ
- 多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがある重篤な疾患
- 特に、両眼に現れる急性結膜炎(結膜が炎症を起こし、充血、目やに、流涙、痒(かゆ)み、腫れ等を生じる病態)は、皮膚や粘膜の変化とほぼ同時期又は半日~1日程度先行して生じることが知られているので、そのような症状が現れたときは、皮膚粘膜眼症候群又は中毒性表皮壊死融解症の前兆である可能性を疑うことが重要である。
- 皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症は、いずれも原因医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多いが、1ヶ月以上経ってから起こることもある。
典型的な症状
- 38℃以上の高熱
- 目の充血、目やに(眼分泌物)、まぶたの腫れ、目が開けづらい
- 口唇の違和感、口唇や陰部のただれ
- 排尿・排便時の痛み
- 喉の痛み
- 広範囲の皮膚の発赤
中毒性表皮壊死融解症は、38℃以上の高熱を伴って広範囲の皮膚に発赤が生じ、全身の
10%以上に火傷様の水疱(ほう)、皮膚の剥(はく)離、びらん等が認められ、かつ、口唇の発赤・びらん、眼の充血等の症状を伴う病態である。
発生頻度
皮膚粘膜眼症候群は、人口100万人当たり年間1~6人と報告されている。
中毒性表皮壊死融解症は、人口100万人当たり年間0.4~1.2人と報告されている。
ともに、発症機序の詳細は不明であり、発症の予測は困難である。
肝機能障害
医薬品により生じる肝機能障害は、有効成分又はその代謝物の直接的肝毒性が原因で起きる中毒性のものと、有効成分に対する抗原抗体反応が原因で起きるアレルギー性のものに大別される。
なお、いわゆる健康食品、ダイエット食品として購入された無承認無許可医薬品の使用による重篤な肝機能障害も知られている。
特徴
- 軽度の肝機能障害の場合、自覚症状がなく、健康診断等の血液検査(肝機能検査値の悪化)で初めて判明することが多い。
- 肝機能障害が疑われた時点で、原因と考えられる医薬品の使用を中止し、医師の診療を受けることが重要である。漫然と原因と考えられる医薬品を使用し続けると、不可逆的な病変(肝不全)を生じ、死に至ることもある。
典型的な症状
- 全身の倦怠感(けんたいかん)
- 黄疸(おうだん):ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じる、皮膚や白眼が黄色くなる病態である。また、過剰となった血液中のビリルビンが尿中に排出されることにより、尿の色が濃くなることもある。
- 発熱
- 発疹
- 皮膚の掻痒感(そうようかん)
- 吐き気
偽アルドステロン症
体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われることによって生じる病態である。副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこのような状態となることから、偽アルドステロン症と呼ばれている。
特徴
- 低身長、低体重など体表面積が小さい者や高齢者で生じやすい
- 原因医薬品の長期服用後に初めて発症する場合もある。
典型的な症状
- 手足の脱力
- 血圧上昇
- 筋肉痛
- こむら返り
- 倦怠感(けんたいかん)
- 手足のしびれ
- 頭痛
- むくみ(浮腫)
- 喉の渇き
- 吐きけ・嘔吐(おうと)
病態が進行すると、筋力低下、起立不能、歩行困難、痙攣(けいれん)等を生じる。
病気等に対する抵抗力の低下等
白血球の減少
医薬品の使用が原因で血液中の白血球(好中球)が減少し、細菌やウイルスの感染に対する抵
抗力が弱くなって、突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦怠感等の症状を呈することがある。
特徴
- 進行すると重症の細菌感染を繰り返し、致命的となることもある。
- ステロイド性抗炎症薬や抗癌(がん)薬などが、そのような易感染性をもたらすことが知られている。
- 初期においては、かぜ等の症状と見分けることが難しい。
典型的な症状
- 突然の高熱
- 悪寒
- 喉の痛み
- 口内炎
- 倦怠感
血小板の減少
医薬品の使用が原因で血液中の血小板が減少し、鼻血、歯ぐきからの出血、手足の
青あざ(紫斑)や口腔(くう)粘膜の血腫等の内出血、経血が止まりにくい(月経過多)等の症状が現れることがある。
(参考)改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)、
登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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