民法を学んで、その魅力を体験しよう。今回から「物権法」を学んでいこう。
物権の客体
物権は、物に対する直接的、絶対的、排他的な支配権であることから、物権の客体とは、支配の対象になりうる物、すなわち有体物であり、かつ、特定された独立の物である。
有体物
民法において「物」とは、有体物をいう。(民法85条)
有体物とは、液体、気体、個体のように空間の一部を占める有形的な存在を有する物のことであり、不動産と動産に区別される。
土地及びその定着物は、不動産とする。(86条1項)
不動産以外の物は、すべて動産とする。(同条2項)
(例外)
・地上権及び永小作権も、抵当権の目的とすることができる。(369条2項)
・質権は、財産権をその目的とすることができる。(362条1項)
なお、電気や著作物などの無体物は物権の客体とならない。もっとも無体物が有体物と同様の取り扱いを受けることもある。必要に応じて無体物に85条を類推適用できるとされる。
この章の罪については、電気は、財物とみなす。(刑法245条)
この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。(著作権法1条)
土地の定着物
・土地の一部となっている定着物(樹木など)
なお、樹木自体に独立の所有権が認められる場合がある。
・土地とは別途独立の定着物→建物
(例)
・不動産登記法では、土地と建物で別個に登記簿を設けている。
・抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産。)に付加して一体となっている物に及ぶ。(370条)
特定性
物権の客体である物は、特定していなければならない。
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。(549条)
上記において、引き渡す債権は発生するものの、それが特定されない限り、所有権が移ることはない。
独立性・単一性
物権の客体である物は、独立かつ単一の物でなければならない。
↓
① 一つの物の一部は独立の物でないため、その一部に独立の物権が成立することはない。(独立性)
② 複数の物は単一の物でないため、複数の物の上に一つの物権が成立することはない。(単一性)
この原則を、「一物一権主義」という。
ただし、
①について、土地について、不動産登記簿上で、人為的に区分された一筆が、1個の土地(物)であるとされる。
土地に生立する樹木
・立木法に基づく登記により公示された立木
②について、判例は、多数の動産を1個の「集合物」としてとらえ、その集合物の上に一つの譲渡担保権を認めている。
工場法では、工場とその工場に備え付けられた機械・器具その他工場の用に供する物もひっくるめて、一つの抵当権の客体とすることも認めている。(工場抵当法2条参照)
(参考文献)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ)(日本評論社)、C-Book 民法II〈物権〉 改訂新版(東京リーガルマインド)
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