法律上、夫婦となること、あるいは夫婦の関係にあることを「婚姻」という。
婚姻についても、民法の大原則である私的自治の原則が妥当する。しかし、すべて当事者の私的自治に委ねられているわけではない。民法の定める一定の手続が必要となる。
すなわち、婚姻には、契約的な側面と制度的な側面とがある。
婚姻の要件
婚姻障害
もっぱら公益的・社会的な観点から婚姻の成立を阻止するために定められた条件のことを婚姻障害という。
婚姻障害がある場合、婚姻の届出が受理されない。(民法740条)
しかし、届出が誤って受理された場合、婚姻は成立し、その取り消しができるのみである。
婚姻障害に関する問題ー同性婚
民法には明文の規定はないものの、婚姻は男女間ですることが前提とされている。
それ故に、同性の二人が婚姻の届出をしても受理されない。
これに対し、同性婚を認めない民法及び戸籍法を改廃しないのは、国会議員による違法な立法不作為にあたるとして、国に損害賠償を求める訴訟が2019年、各地の地裁に提起された。
原告は、同性婚を認めないことは、婚姻の自由を保障した憲法24条や法の下の平等を定める同14条1項に違反すると主張した。
一方、同性カップルであることを理由とした差別や不利益が生じないようにする自治体の取り組みも広がっている。(東京都渋谷区のパートナーシップ証明書の発行(2015年)など)
婚姻適齢に達しない者の婚姻の禁止
婚姻は、18歳にならなければ、することができない。(民法731条)
重婚の禁止
配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。(民法732条)
重婚は刑法上の罪(刑法184条)でもあり、一夫一婦制が我が国の婚姻のあるべき姿とされている。
問題となるのは、失踪者につき、失踪宣告(30条)がなされ、その配偶者が再婚したところ、失踪者が生存していたため、失踪宣告が取り消された場合である。
失踪宣告が取り消されると、はじめからなかったものとされる。
その結果、32条1項後段が適用される場合を除いて失踪者を当事者とする婚姻(前婚)は解消していなかったことになり、重婚状態が生じてしまうことになる。
この場合、前婚の復活を認めるべきではないとする見解が有力である。
近親婚の禁止
(近親者間の婚姻の禁止)
第734条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
(直系姻族間の婚姻の禁止)
第735条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第七百二十八条又は第八百十七条の九の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
(養親子等の間の婚姻の禁止)
第736条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第七百二十九条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
(参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社
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