民法を学ぼう!「離婚の方法(3)裁判離婚(その3)」

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司法・法務

今回は、有責配偶者からの離婚請求について確認しよう。

有責配偶者からの離婚請求

一般に、婚姻関係を破綻させた責任のある夫婦の一方を有責配偶者という。

婚姻関係の破綻を招いた有責配偶者もその破綻を原因として離婚を請求できるとする立場は積極的破綻主義と呼ばれ、その離婚請求を許さない立場は消極的破綻主義と呼ばれる。

昭和62年大法廷判決前の状況

夫が妻を差し措いて他に情婦を持ち、それがもとで妻との婚姻関係継続が困難になった場合、それだけで夫の側から民法第770条第1項第5号によって離婚を請求することは許されない。
最判昭和27.2.19民集 第6巻2号110頁)

この判決は、消極的破綻主義の立場を明らかにした最初の最高裁判決であると理解されている。

この判決の後も、他の女性との同棲・妻との別居によって婚姻を継続し難くした夫からの離婚請求を認めない判決が続いた。

しかし、離婚請求が否定されたからといって、有責配偶者がもう一方の元に戻って婚姻関係が回復されるわけではない。

その結果、離婚訴訟が夫婦間の私事を暴露し、責任のかぶせ合いをする場となり、夫婦間の人間関係は完全に破壊されてしまう。消極的破綻主義にはこのような問題点があった。

昭和62年大法廷判決の登場

① 有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、その間に未成熟子がいない場合には、相手方配偶者が離婚によつて精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない

② 有責配偶者からされた離婚請求であっても、(a)夫婦が36年間別居し、(b)その間に未成熟子がいないときには、(c)相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、認容すべきである。
最判昭和62.9.2民集 第41巻6号1423頁)

※(a)夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及ぶということ。

昭和62年大法廷判決後の動向

昭和62年大法廷判決後の裁判実務においては、同判決が、上記②の部分において、有責配偶者からの離婚請求が信義則に反しない場合を具体化しているとの理解を前提に、(a)(b)(c)の3要件が満たされているか否かが、審理の中心となる傾向にある。

参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社

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