立木は、原則として、 土地の一部を構成する。 そのため、立木についてはまず、立木を独立の物として、 物権の客体とすることができるかどうかが問題となる。
これが認められると、 次に、立木の物権変動について、どのようなルールが適用されるのかが問題となる。つまり、立木については、その独立性と物権変動との双方を検討する必要がある。
I 立木の法的性格
1 土地の一部としての立木
立木は、土地の定着物であるから、不動産に当たる (86条1項)。不動産の中には、土地から独立した物もある。 建物は、 土地から独立した不動産であるとされている(370条本文参照)。 これに対し、 立木は、原則として、土地の一部を構成する。
このように、 不動産であるかどうかと、 独立の物であるかどうかとは、別の次元の問題である。
(不動産及び動産)
第86条 土地及びその定着物は、不動産とする。
2 不動産以外の物は、すべて動産とする。
(抵当権の効力の及ぶ範囲)
第370条 抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(以下「抵当不動産」という。)に付加して一体となっている物に及ぶ。
(略)
(民法・e-Gov法令検索)
2 独立の物としての立木
もっとも、実務では、古くから、立木を独立の取引対象とする慣行があった。
この慣行を尊重して、 法的にも、立木を独立の物として取引することが認められている。
そのための方法としては、2つのものがある。
(1)立木法による登記
第1は、立木ニ関スル法律(立木法)による登記を備えることである。 一筆の土地または一筆の土地の一部に生立する樹木の集団について、 所有者が立木法による所有権保存登記を備えたときは、その樹木の集団は、立木法上の立木となる (立木1条)。
立木法上の立木は、建物と同じように、土地から独立した不動産である(立木2条)。
そのため、立木法上の立木は、土地から分離してこれを譲渡したり、抵当権の目的としたりすることができる (同条2項)。
立木法上の立木について、譲渡がされたことや抵当権が設定されたことを第三者に対抗するために は、その旨の立木法による登記を備えなければならない(立木12条以下)。
(2)明認方法
第2は、明認方法を施すことである。 個々の樹木については、立木法による登記を備えることができない。 また、 樹木の集団であっても、近いうちに伐採することが予定されているときなどは、立木法による登記を備えることを期待することができない。
そこで、判例上、 立木の所有者は、 明認方法を施すことで、 立木を独立の物として取引することができるとされてきた。具体的には、木の皮を削り、 所有者名を墨書するといった方法がとられる。 しかし、この方法では、立木法による登記とは異なり、権利の内容を詳しく公示することができない。そのため、 明認方法は、抵当権の設定を公示するものとしては、これを用いることができないとされている。
(参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社
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