7 準共有
前回までみてきた「共有」は、複数の者が所有権を共同で有する形態であった。しかし、所有権以外の財産権を数人で共同して有する場合もある。このような場合について規定しているのが準共有である。
(1)準共有の意義
数人で所有権以外の財産権を共同して有する場合を「準共有」と呼び、法令に特別の定めがある場合を除き、共有に関する規定が原則として準用される(ただし、262条の2・262条の3を除く。264条)。
(準共有)
第二百六十四条 この節(第二百六十二条の二及び第二百六十二条の三を除く。)の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。
(民法・e-GOV法令検索)
(2)準共有の対象となる権利
所有権以外の財産権についても、数人が共同して有する場合には、原則として準共有の規定が準用される。具体的には以下のような権利が該当する。
- 用益物権・担保物権
地上権、永小作権、抵当権、質権などを数人で保有する場合 - 債権
債権については、民法427条以下に多数当事者の債権・債務に関する特則があるため、債権の性質や法令の規定に応じて、準共有の規定ではなく、これらの規定が適用される場合がある。 - 無体財産権(知的財産権)
特許権、著作権、商標権などを数人で保有する場合 - 形成権・その他
解除権や取消権などの形成権、鉱業権など
(3)準共有の規律と「特別の定め」(特則)
準共有には原則として共有の規定が準用されるが、264条但書により「法令に特別の定めがある場合」はその規定が優先適用される。
この「特別の定め」には、民法自体に規定された特則と、知的財産権等の特別法(個別法)による特則の2種類が存在する。
① 民法上の主な「特別の定め」
- 地役権の不可分性(282条・292条等)
地役権が共有されている場合、共有者の一人はその持分についてのみ地役権を消滅させることができない(282条1項)。
また、要役地が数人の共有に属する場合、その一人のために時効の完成猶予または更新があるときは、その効力が他の共有者にも及ぶ(292条)。
282条は「土地の共有者の一人は、その持分につき地役権を消滅させることができない」という規定である。 - 根抵当権の共有(398条の14)
根抵当権を複数の者で共有する場合、通常の共有と異なり、優先弁済を受ける割合を定めたり、他の共有者の同意を得て譲渡するなどの特則が設けられている。 - 多数当事者の債権・債務の規定(427条以下)
金銭債権などの可分債権を数人で有する場合、民法427条以下に多数当事者の債権・債務に関する特則が置かれているため、これらの規定との関係に注意すること。 - 解除権の不可分性(544条)
当事者の一方が数人ある場合、契約の解除は全員から、または全員に対してのみ行わなければならない(544条1項)。単独で権利行使・変更ができる共有の保存行為や管理行為のルールとは異なる特則である。 - 組合財産に関する規定(668条以下)
組合財産については、668条以下に特別の規定があり、持分の処分や清算前の分割請求が制限されている(676条)。
② 特別法(知的財産権等)による「特別の定め」
- 特許権等の持分処分制限(特許法73条1項等)
特許権を共有する場合、他の共有者の同意がなければ持分の譲渡や質権設定ができない。通常の共有とは異なる特許法上の特別規定である。
【まとめ】準共有と民法上の「特別の定め」一覧
| 特別な定めの内容 | 対象となる権利・法律 | 共有規定(原則)との主な差異 |
| 地役権の不可分性 | 地役権(282条、292条) | 持分のみの消滅不可、時効の完成猶予・更新の効力が他の共有者にも及ぶ |
| 根抵当権の共有 | 根抵当権(398条の14) | 優先弁済割合の決定や権利譲渡に独自の決定ルール |
| 可分債権の分割関係 | 多数当事者の債権(427条) | 債権については、427条以下に多数当事者の債権・債務に関する特則が置かれているため、これらの規定との関係に注意する必要がある。 |
| 解除権の不可分性 | 契約解除権(544条) | 全員から・全員に対してのみ行使可能 |
| 組合財産の合有 | 組合財産(676条) | 持分の自由処分・清算前の分割請求の制限 |
| 特許権等の持分譲渡制限 | 特許法73条1項など | 持分の譲渡に他の共有者の同意が必要 |


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