民法を学ぼう!「所有権(20)共有(4)所在等不明共有者の持分の取得・譲渡」

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司法・法務

6 所在等不明共有者の持分の取得・譲渡

不動産の共有者の一部に特定不能または所在不明の共有者が存在すると、共有物の処分や管理が著しく阻害される。

この問題に対処するため、令和3年民法改正(2023(令和5年)年4月1日施行)により、裁判所の決定を得て、他の共有者が所在等不明共有者の持分を取得・譲渡できる新たな仕組み(262条の2、262条の3)が創設された。

(1)所在等不明共有者の持分の取得(262条の2)

他の共有者が、裁判所の決定を得て、所在等不明共有者の持分を取得する制度である。

① 要件と手続

  • 要件
    他の共有者を知ることができない(氏名等不特定)、又はその所在を知ることができないこと。
  • 申立て
    他の共有者が裁判所に対して申し立てる

② 効果

裁判が確定すると、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按あん分してそれぞれ取得させる。

なお、所在等不明共有者の持分を取得する場合、裁判所の供託命令に基づき、その持分の時価相当額の金銭を供託する必要がある。所在等不明共有者は、その供託金から支払いを受けることができる。

(所在等不明共有者の持分の取得)
第二百六十二条の二 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)の持分を取得させる旨の裁判をすることができる。この場合において、請求をした共有者が二人以上あるときは、請求をした各共有者に、所在等不明共有者の持分を、請求をした各共有者の持分の割合で按あん分してそれぞれ取得させる。
2 前項の請求があった持分に係る不動産について第二百五十八条第一項の規定による請求又は遺産の分割の請求があり、かつ、所在等不明共有者以外の共有者が前項の請求を受けた裁判所に同項の裁判をすることについて異議がある旨の届出をしたときは、裁判所は、同項の裁判をすることができない。
3 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、第一項の裁判をすることができない。
4 第一項の規定により共有者が所在等不明共有者の持分を取得したときは、所在等不明共有者は、当該共有者に対し、当該共有者が取得した持分の時価相当額の支払を請求することができる。
5 前各項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。
(民法・e-GOV法令検索)

(2)所在等不明共有者の持分の譲渡(262条の3)

共有物全体を第三者に売却(譲渡)したい場合、原則として共有者全員の同意(251条1項)が必要となる。しかし、所在等不明共有者がいると、共有者全員の同意を得ることができず、共有物全体の譲渡が困難になる。

そこで、裁判所の決定を得ることで、所在等不明共有者の持分も含めて共有物全体を第三者に一括譲渡できる仕組みが整備された。

① 要件と手続

  • 要件
    共有者が他の共有者を特定できない、または所在を知ることができないこと。
  • 手続
    裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該「所在等不明共有者」以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。

② 効果

裁判により権限を付与された共有者は、自己の持分だけでなく、所在等不明共有者の持分についても譲渡権限を有することになる。

なお、この制度を利用して所在等不明共有者の持分を譲渡する場合も、裁判所の供託命令に基づき、所在等不明共有者のために金銭を供託する必要がある。

(所在等不明共有者の持分の譲渡)
第二百六十二条の三 不動産が数人の共有に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、その共有者に、当該他の共有者(以下この条において「所在等不明共有者」という。)以外の共有者の全員が特定の者に対してその有する持分の全部を譲渡することを停止条件として所在等不明共有者の持分を当該特定の者に譲渡する権限を付与する旨の裁判をすることができる。
2 所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る。)において、相続開始の時から十年を経過していないときは、裁判所は、前項の裁判をすることができない。
3 第一項の裁判により付与された権限に基づき共有者が所在等不明共有者の持分を第三者に譲渡したときは、所在等不明共有者は、当該譲渡をした共有者に対し、不動産の時価相当額を所在等不明共有者の持分に応じて按分して得た額の支払を請求することができる。
4 前三項の規定は、不動産の使用又は収益をする権利(所有権を除く。)が数人の共有に属する場合について準用する。
(民法・e-GOV法令検索)

(3)遺産共有への特則と配慮

これらの制度(262条の2、262条の3)は、遺産分割をする機会を確保するための配慮がなされている。
すなわち、所在等不明共有者の持分が相続財産に属し、共同相続人間で遺産分割をすべき場合には、原則として相続開始から10年を経過するまで、この制度を利用することはできない。また、共有物分割や遺産分割の請求がされ、所定の期間内に異議の届出があった場合には、これらの手続が優先される。

【まとめ】所在等不明共有者の持分制度

制度条文目的・概要主な要件
持分の取得262条の2他の共有者が、所在等不明共有者の持分を取得する所在等不明共有者のための金銭の供託
持分の譲渡262条の3所在等不明共有者の持分譲渡権限を得る裁判をすることができる。所在等不明共有者のための金銭の供託

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