民法の過去問を解いてみよう(賃貸管理士:賃貸借の内容)

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不動産

今回のテーマは、「賃貸借の内容」である。

それでは、「賃貸不動産経営管理士」試験で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。

【問 25】 建物賃貸借契約における必要費償還請求権、有益費償還請求権及び造作買取請求権に関する次の記述のうち、適切なものの組合せはどれか。 

ア 賃貸物件に係る必要費償還請求権を排除する旨の特約は有効である。 
イ 借主が賃貸物件の雨漏りを修繕する費用を負担し、貸主に請求したにもかかわらず、貸主が支払わない場合、借主は賃貸借契約終了後も貸主が支払をするまで建物の明渡しを拒むことができ、明渡しまでの賃料相当損害金を負担する必要もない。
ウ 借主が賃貸物件の汲取式トイレを水洗化し、その後賃貸借契約が終了した場合、借主は有益費償還請求権として、水洗化に要した費用と水洗化による賃貸物件の価値増加額のいずれか一方を選択して、貸主に請求することができる。
エ 借主が賃貸物件に空調設備を設置し、賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使した場合、貸主が造作の代金を支払わないときであっても、借主は賃貸物件の明渡しを拒むことができない。

1 ア、イ 
2 イ、ウ 
3 ウ、エ 
4 ア、エ

賃貸不動産経営管理士試験 令和3年11月21日 問題
正解:4

ア 正しい。必要費償還請求権(民法608条1項)は、特約で排除できる。

(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
(略)

民法・e-Gov法令検索

イ 誤り。必要費償還請求権に基づく請求にもかかわらず賃貸人が支払わなければ、賃借人は留置権(295条)に基づいて建物の明渡しを拒むことができる。ただし、その結果、賃借人の得た賃料相当額の利益については、賃貸人が賃借人に対して請求することができる。

ウ 誤り。賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、当該賃借物の価格の増加が現存する場合に限り、賃貸人の選択に従い、その支出した金額または、増加額を償還しなければならない。(有益費償還請求権)汲取式トイレを水洗化した費用は、有益費に当たる。(608条2項、196条2項本文)

(賃借人による費用の償還請求)
第六百八条 (略)
2 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条 (略)
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。

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エ 正しい。造作買取請求権については、以下の条文参照。(借地借家法33条)

(造作買取請求権)
第三十三条 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
(略)

借地借家法・e-Gov法令検索

このように、造作買取請求権は造作に関して生じた債権である。一方で本肢は、建物の明け渡しについての是非を問うものである。この点、建物に関して生じた債権ではないので、賃借人は、賃貸物件の明け渡しを拒むことはできない。(最判昭29.1.14)

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