民法トピックス「賃貸人の義務」

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賃貸借 不動産

本稿では、民法の各分野のうち、各種資格試験の頻出テーマについて取り上げる。

今回は、「債権各論(賃貸借)」から「賃貸人の義務」である。

賃貸人の義務

使用収益させる義務

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。(民法601条)

賃貸人は、目的物の使用収益に適した状態に置くという積極的義務を負う。

賃貸人の契約不適合責任

引き渡された賃貸借の目的物に契約不適合があった場合、売買における売主の契約不適合責任に関する規定が準用される。(559・562~564条)

修繕義務

修繕義務が課せられる場合

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。(修繕義務、606条1項本文)

賃貸人に帰責事由がある場合はもとより、当事者双方に帰責事由がない場合(不可抗力、通常摩耗、経年劣化によって生じた場合など)にも賃貸人は修繕義務を負う。

ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、修繕義務を負わない。(606条1項ただし書)

また、賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。(賃借人の受忍義務、606条2項)

ただし、賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。(607条)

なお、修繕義務が発生するのは、修繕が可能な場合に限られる。

義務違反の効果

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。(611条1項)

さらに、債務不履行による損害賠償(415条)、契約の解除も問題となる。

賃借人による修繕権

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。(607条の2)

  1. 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
  2. 急迫の事情があるとき。

費用償還義務

必要費、有益費を償還する義務を負う。

必要費

使用収益に適する状態に目的物を維持・保管するために必要な費用である。

賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。(608条1項)

有益費

目的物の改良のために支出された費用のことをいう。

賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。(608条2項本文)

(占有者による費用の償還請求)
第196条
(略)
 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
民法・e-Gov法令検索

ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。(608条2項ただし書)

費用償還請求権の行使期間

必要費・有効費の償還請求権は、賃貸人が、目的物の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。(622条、600条1項)

(参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版(東京リーガルマインド)、民法IV 契約 (LEGAL QUEST) (有斐閣)

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