本稿では、民法の各分野のうち、各種資格試験の頻出テーマについて取り上げる。
今回は、「債権各論」から「使用貸借」である。
使用貸借
(使用貸借)
第593条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
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法的性質
片務・無償・諾成契約
片務契約
貸主の貸す義務と借主の返す義務との間に対価的な牽連性はなく、貸主が目的物を引き渡した後に負うのは、目的物の使用を借主に許容する消極的な義務のみである。
無償契約
使用貸借は無償契約である。(593条)
貸主・借主間の特別な信頼関係を基に締結される。
諾成契約
目的物の引き渡し前であっても契約の拘束力を認めるべく、諾成契約とされている。
使用貸借の成立
要件
使用貸借は、貸主と借主の合意により成立する(諾成契約)
貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。(592条の2本文)
ただし、書面による使用貸借については、上記の貸主による解除権は認められない。(592条の2ただし書)
使用貸借の効力
貸主の義務
貸主は、借主に対して「貸す義務」を追う。(593条)
貸主がこの債務を履行しないときは、借主は、履行の請求、債務不履行に基づく損害賠償請求、契約の解除をすることができる。
貸主は、借主に対して、目的物の使用収益を妨げないという消極的義務を負う。
→借主は、借用物の通常の必要費を負担する。(595条1項)また、目的物の修繕義務も負わない。
貸主の引渡義務・契約不適合責任
贈与者の引渡義務の規定(551条)が準用される。(596条)
(貸主の引渡義務等)
第596条 第551条の規定は、使用貸借について準用する。
(贈与者の引渡義務等)
第551条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、又は移転することを約したものと推定する。
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。
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借主の権利・義務
使用収益権(用法遵守義務)
借主は、目的物の使用収益権を有するが、用法遵守義務(594条1項)を負う。
また、借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。(594条2項)
そして、借主がこれらの義務違反をした場合、無催告解除ができる。(594条3項)
(借主による使用及び収益)
第594条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
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また、借主の用法遵守義務違反によって、貸主に損害が生じたときは、貸主はその賠償を請求することができる。
なお、この損害賠償請求権は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。(600条1項)
この損害賠償請求権は、貸主が返還を受けた時から1年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。(600条2項)
目的物保管義務
借主は、目的物の保管について善管注意義務を負う(400条)
費用の負担について
通常の必要費
借主は、借用物の通常の必要費を負担する。(595条1項)
特別の必要費
特別の必要費は、貸主が負担する。
→借主が特別の必要費を支出したときは、目的物の返還時に貸主に償還させることができる。
(595条2項、583条2項、196条1項本文)
有益費
有益費も貸主が負担する。
→借主が有益費を支出したときは、価格の増加が現存する場合に限り、借主の選択に従い、その支出した金額または増加額を貸主に償還させることができる。
(595条2項、583条2項、196条2項本文)
なお、借主の費用償還請求権は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。(600条1項)
目的物返還義務
使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。(593条)
借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。(599条1項本文)
ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、収去義務を負わない。(599条1項ただし書)
また、借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。(599条2項)
原状回復義務
借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。(599条3項本文)
ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、借主は原状回復義務を負わない。(599条3項ただし書)
使用貸借の終了
当然終了
- 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。(597条1項)
- 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。(597条2項)
- 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。(597条3項)
意思表示による終了
貸主の解除権
- 貸主は、当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。(598条1項)
- 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。(598条2項)
借主の解除権
借主は、いつでも契約の解除をすることができる。(598条3項)
(参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版(東京リーガルマインド)、民法IV 契約 (LEGAL QUEST)(有斐閣)
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