民法を学ぼう(被保佐人)

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司法・法務

今回は、成年後見制度のうち、「保佐」を取り上げる。

被保佐人とは

(保佐開始の審判)
第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。

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事理弁識能力低下の程度は、「著しく不十分である者」となる。

家庭裁判所が保護を開始する旨の審判を行うことによって開始される。(被保佐人→保佐開始の審判)

開始の申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、すでに本人に保護者が付されているときは、その保護者、または検察官である。

被保佐人の能力の範囲

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
(略)

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被保佐人は、要な財産上の行為を単独ではできず、保佐人の同意が必要である。ただし、日常生活に関する行為は単独で有効になしうる。

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 (略)
3 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

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被保佐人が同意を得ないで13条1項に列挙されている行為を行ったときは、取り消すことができる。取消権者には、被保佐人本人のほか、保佐人も含まれる。

なお、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

保佐人の同意を要する行為

保佐人の同意を要する行為は、13条1項各号に列挙されている。このうち、特に注意すべきは下記のとおりである。

  • 貸金の返済を受ける・・1項1号「元本を領収」にあたる。利息、賃料を領収する場合は同意は不要。
  • 約束手形の振出・・1項2号「借財」にあたる。
  • 不動産賃貸借の合意解除・・1項3号「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」にあたる。
  • 訴えの提起、上訴、訴えの取下げ、裁判上の和解等・・1項4号「訴訟行為」にあたる。なお、被保佐人を被告として提起された訴訟に応訴する場合には同意は不要である。(民訴法32条1項)
  • 1項各号の行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人)の法定代理人として行うには、保佐人の同意が必要である。(1項10号)

また、13条1項列挙事由以外にも、家庭裁判所は、保佐人の同意を要する事項を定めることができる。

(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 (略)
2 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
(略)

保佐人とは

保佐開始の審判があると、保護者として保佐人が付される。

(被保佐人及び保佐人)
第十二条 保佐開始の審判を受けた者は、被保佐人とし、これに保佐人を付する。

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保佐人には、同意権がある。(13条1項)取消権(120条1項)、追認権(122条)も認められる。

ただし、代理権は自動的に保佐人に付与されない。保佐開始の審判とは別に、保佐人に代理権を付与する旨の審判(876条の4)を行わなければ、保佐人は代理権をもたない。なお、この審判を行うには被保佐人の同意を要する。

(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
第八百七十六条の四 家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
2 本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 家庭裁判所は、第一項に規定する者の請求によって、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。

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参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、司法書士 合格ゾーンテキスト 1 民法I  「第3版」根本正次著 (東京リーガルマインド)、C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版(東京リーガルマインド)

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