民法トピックス「事務管理」

スポンサーリンク
司法・法務

本稿では、民法の各分野のうち、各種資格試験の頻出テーマについて取り上げる。

今回は、「債権各論」から「事務管理」である。

事務管理

事務管理とは、委任その他の契約又は法律の規定によって義務を負担しているのでないにもかからわらず、他人の事務を管理する場合であって、管理者が他人のために管理をする意思を有している場合をいう。

事務管理は、あくまでも法律の規定に基づき発生する準法律行為にすぎず、管理者の意思表示ないしは法律行為ではな

(事務管理)
第697条 義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
 管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。
民法・e-Gov法令検索

事務管理の成立要件

  • 他人の事務を管理すること(697条1項)
  • 他人のためにする意思があること(697条1項)
    ・「他人のためにする意思」とは、他人の利益を図る目的をもって事務を管理する意思をいう。
    ・他人のためにする意思は、自己のためにする意思と併存してもよい。
    ・専ら自己のためにする意思の場合(準事務管理)
    →準事務管理否定説(通説)
    他人の事務と知りつつ自己のために管理した場合は、不当利得又は不法行為の規定によって処理されるべきである。
  • 法律上の義務がないこと(697条1項)
  • 本人の意思及び利益に適合すること
    管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。(697条2項)
    また、本人の意思に反すること、および本人に不利があることが明らかである場合には、事務管理は成立しない。(700条ただし書)
    ただし、本人の意思は適法なものであることを要する。

事務管理の効果

債権・債務の発生

管理者の義務

注意義務

管理者は、本人の意思を知っているとき、又はこれを推知することができるときは、その意思に従って事務管理をしなければならない。(697条2項)
そうでないときは、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、事務管理をしなければならない。(697条1項)

もっとも、管理者は、本人の身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるために事務管理をしたときは、悪意又は重大な過失があるのでなければ、これによって生じた損害を賠償する責任を負わない。(緊急事務管理、698条)

通知義務

管理者は、事務管理を始めたことを遅滞なく本人に通知しなければならない。(通知義務、699条)

管理継続義務

管理者は、本人又はその相続人若しくは法定代理人が管理をすることができるに至るまで、事務管理を継続しなければならない。(管理継続義務、700条本文)

ただし、事務管理の継続が本人の意思に反し、又は本人に不利であることが明らかであるときは、事務管理を中止しなければならない。(700条ただし書)

委任の規定の準用

委任の規定が準用され、報告義務、受取物の引渡義務等、金銭消費の責任を負う(645、646、647条)

管理者の権利

有益費償還請求権

管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。(702条1項)
本人の意思に反する場合(702条3項)を除き、管理者は、本人に対し、全額の償還を請求することができる。

代弁済請求権

管理者は、本人のために有益な債務を負担したときは、管理者は、本人に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。(702条2項、650条2項前段)

また、その債務が弁済期にないときは、本人に対し、相当の担保を供させることができる。(702条2項、650条2項後段)

報酬請求権・損害賠償請求権

管理者は、本人に対し、報酬の支払を請求する権利をもたない。

また、管理者は、事務管理のために被害を被ったとしても、その賠償を請求する権利をもたない。
→701条は、損害賠償請求権に関する650条3項を準用していない。

参考)C-Book 民法IV〈債権各論〉 改訂新版(東京リーガルマインド)、民法Ⅴ 事務管理・不当利得・不法行為 第2版 (LEGAL QUEST)(有斐閣)

コメント

タイトルとURLをコピーしました