本稿では、「建物の区分所有等に関する法律」を「区分所有法」と称する。
本稿は、「管理業務主任者試験」の出題範囲のうち、区分所有法の頻出論点をまとめたものである。
義務違反者に対する措置
区分所有者及び占有者に対する共同の利益に反する行為の停止等の請求
請求の内容(区分所有法57条)
- 行為の停止請求
- 行為の結果の除去
- 行為を予防するため必要な措置を執る
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第57条 区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
(区分所有者の権利義務等)
第6条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
(略)
区分所有法・e-GOV法令検索
請求に必要な手続き
共同の利益に反する行為の停止等の請求は、訴訟上(裁判)、訴訟外(口頭等)のどちらも可能。
ただし、訴訟上で請求する場合は、集会の普通決議が必要である。
この義務違反者に対する措置を決する集会において、義務違反者である区分所有者自身も、自己の議決権を行使することができる。
弁明の機会の付与
共同の利益に反する行為の停止等の請求では、訴訟上(裁判)、訴訟外(口頭等)のどちらも弁明の機会の付与は不要とされている。
管理者または集会で指定された区分所有者を原告とする場合
管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議(普通決議)により、他の区分所有者の全員のために、訴訟を提起することができる。(57条3項)
区分所有者に対する使用禁止の請求
請求の内容
区分所有者が共同利益に反する行為をした、または、するおそれがある場合、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、行為の停止等の請求によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。(58条1項)
請求に必要な手続、弁明の機会の付与
使用禁止の請求の訴えの決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数(特別決議)でする。(同2項)
また、この決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。(同3項)
管理者又は集会において指定された区分所有者を原告とする場合
管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議(普通決議)により、他の区分所有者の全員のために、訴訟を提起することができる。(58条4項、57条3項)
区分所有者に対する区分所有権の競売の請求
請求の内容
区分所有者が共同利益に反する行為をした、または、するおそれがある場合、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。(59条1項)
この競売は、債権の回収を目的とするものではない。
請求の手続、弁明の機会の付与
競売請求の決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数(特別決議)でする。(59条2項、58条2項)→訴訟上で請求
また、この決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。(59条2項、58条3項)
管理者又は集会において指定された区分所有者を原告とする場合
管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議(普通決議)により、他の区分所有者の全員のために、訴訟を提起することができる。(59条2項、57条3項)
競売申立の期限
競売請求を認める判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6か月を経過したときは、することができない。(59条3項)
競売の買受人の制限
この競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。(59条4項)
※「その者の計算において買い受けようとする者」とは、義務違反者である区分所有者のために買い受ける者をいう。
占有者に対する引渡し請求
請求の内容
占有者が共同利益に反する行為をした、または、するおそれがある場合、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもって、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。(60条1項)
占有者に対する引渡請求は、原告に専有部分の引き渡しを求めるものである。その専有部分を占有する権原を有する者(貸主等)に直接引き渡すように求めることはできない。
被告とすべき者
占有者に対する引渡請求訴訟において、被告は、解除の対象となる契約の両当事者である。(共同被告)
請求の手続、弁明の機会の付与
引渡請求は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数(特別決議)でする。(60条2項、58条2項)→訴訟上で請求
また、この決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。(60条2項、58条3項)
管理者又は集会において指定された区分所有者を原告とする場合
管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議(普通決議)により、他の区分所有者の全員のために、訴訟を提起することができる。(60条2項、57条3項)
引渡の相手方
引渡請求が認められた場合、判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。(60条3項)
(参考)
らくらくわかる! マンション管理士 速習テキスト 2023年度(TAC出版)
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