マンション管理士まとめノート(2)「民法(売買契約)」

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本稿は、「マンション管理士試験」の出題範囲のうち、民法の頻出論点をまとめたものである。

売買契約とは

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金支払うことを約することによって、その効力を生ずる。(民法555条)

売買契約は、「ある財産権を相手方に移転すること」と「その代金支払うこと」の合意で成立する諾成契約である。また、当事者が互いに財産権と金銭の給付義務を負担しあう双務契約であり、対価を得て財産権を移転する有償契約である。

契約不適合責任

売主は、売買契約の目的物が特定物か種類物かを問わず、種類、品質又は数量が契約内容に適合する物を引き渡す義務を負っている。そのため、買主としては、引き渡された目的物に契約不適合があった場合、売主に対して契約不適合責任(債務不履行責任)を追及することができる。

民法では、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」の売主の責任について規定している。

買主の権利

目的物に関する契約不適合責任

追完請求権(562条)

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(民法562条1項本文)

要件

  1. 「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」であること。
  2. 1の不適合が「買主の責めに帰すべき事由によるもの」でないこと。

追完方法の選択権

買主は、売主に対し、①目的物の修補、②代替物の引渡し又は③不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。(民法562条1項本文)

このように、買主には追完方法の選択権が与えられている。

もっとも、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。(民法562条1項ただし書)

買主の代金減額請求権(563条)

契約不適合がある場合、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。(民法563条1項)

なお、催告によらない代金減額請求の要件は次の通りである。

  • 「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないもの」であること
  • 以下のいずれかに該当すること。
    1. 履行の追完が不能であること。(履行不能)
    2. 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
    3. 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
    4. 上記1~3に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

債務不履行による損害賠償請求は、債務者の帰責事由がない限り請求できない。

契約不適合による代金減額請求は、売主の帰責事由(故意・過失)の有無に関わりなく請求できる。

損害賠償請求権・解除権(564条)

引き渡された目的物が契約不適合である場合、買主は、これまで見てきた、「追完請求権」、「代金減額請求権」に加えて、債務不履行の一般原則に従い、民法415条以下の「損害賠償請求」をすることができ、民法541条、542条に従って「契約の解除」をすることができる。

なお、買主は、売主の帰責事由の有無に関わりなく、契約を解除できるが、契約不適合が買主の責めに帰すべき事由であるときは、買主は契約の解除をすることができない。(民法564条、543条)

権利に関する契約不適合(565条)

これまでに見てきた、買主の権利は、売買の目的が「物」ではなく「権利」であり、売主から供与された「権利」に契約不適合がある場合も同様に発生する。

権利の契約不適合とは、目的物に予定外の抵当権などが存していた場合などである。

売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について、562条~564条が適用される。

買主が契約不適合責任を追及できない場合(567条)

売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。(民法567条1項)

売主が契約の内容に適合する目的物をもって、その引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主がその履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後当事者双方の責めに帰することができない事由によってその目的物が滅失し、又は損傷したときも同様とする。(民法567条2項)

契約不適合責任の期間制限

売主が「種類」又は「品質」に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、「買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないとき」は、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。(民法566条本文)

もっとも、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは適用されない。(民法566条ただし書)

566条は、「種類」又は「品質」に関する契約不適合のみに適用され、「数量」に関する契約不適合については適用されない。

数量に関する契約不適合は消滅時効の一般原則に服する。なお、権利に関する契約不適合も消滅時効の一般原則に服する。

競売における特則(568条)

種類・品質に関する不適合数量・権利に関する不適合
追完請求権✖(568条1項参照)✖(568条1項参照)
代金減額請求権✖(568条4項)〇(568条1項照)
損害賠償請求権✖(568条4項)原則✖(568条1項参照)
解除権✖(568条4項)〇(568条1項)
債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人は、これらの者に対し、損害賠償の請求をすることができる。(568条3項)

手付(557条)

買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。(民法557条1項)

557条1項が想定しているのは、「解約手付」である。「解約手付」とは、解除権を留保する趣旨で交付される手付である。

解約手付の解除による効果

契約は遡及的に消滅する。→当事者双方に原状回復義務

第545条第4項の規定は、適用しない。

(解除の効果)
第545条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない

民法・e-GOV法令検索

したがって、解約手付にあっては、別途、損害賠償請求を認めるべきではない。

もっとも、手付が交付されている場合であっても、債務不履行を理由とする解除がされたときは、その手付が、損害賠償額の予定としての手付でない限り、債務不履行に基づいて損害賠償請求ができる。

(参考)
らくらくわかる! マンション管理士 速習テキスト 2023年度(TAC出版)
C-Book 民法Ⅳ〈債権各論〉 改訂新版(東京リーガルマインド)

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