Ⅱ薬が働く仕組み(5)
3)剤形ごとの違い、適切な使用方法
医薬品がどのような形状で使用されるかは、その医薬品の使用目的と有効成分の性状とに合わせて決められる。そうした医薬品の形状のことを剤形という。
有効成分を消化管から吸収させ、全身に分布させることにより薬効をもたらすための剤形としては、錠剤(内服)、口腔用錠剤、カプセル剤、散剤・顆粒剤、経口液剤・シロップ剤等がある。
これらの剤形の違いは、使用する人の利便性を高めたり、有効成分が溶け出す部位を限定したり、副作用を軽減したりすることに関連する。そのため、医薬品を使用する人の年齢や身体の状態等の違いに応じて、最適な剤形が選択されるよう、それぞれの剤形の特徴を理解する必要がある。
有効成分を患部局所に直接適用する剤形としては、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、貼付剤、スプレー剤等がある。
これらの多くは、有効成分が同じであっても、配合されている添加剤等に違いがあり、剤形によっては症状を悪化させてしまう場合もあるため、患部の状態に応じて適切な剤形が選択されなければならない。
主な剤形に関する一般的な特徴は以下の通りである。
錠剤(内服)
錠剤は、内服用医薬品の剤形として最も広く用いられている。一定の形状に成型された固形製剤であるため、飛散させずに服用できる点や、有効成分の苦味や刺激性を口中で感じることなく服用できる点が主な特徴となっている。一方、一定の大きさがある固形製剤であるため、高齢者、乳幼児等の場合、飲み込みにくいことがある。
錠剤(内服)を服用するときは、適切な量の水(又はぬるま湯)とともに飲み込まなければならない。水が少なかったり、水なしで服用したりすると、錠剤が喉や食道に張り付いてしまうことがあり、薬効が現れないのみならず、喉や食道の粘膜を傷めるおそれがある。
水なしで服用できる錠剤として、以下のものが挙げられる。
① 口腔内崩壊錠
口の中の唾液で速やかに溶ける工夫がなされているため、水なしで服用することができる。固形物を飲み込むことが困難な高齢者や乳幼児、水分摂取が制限されている場合でも、口の中で溶かした後に、唾液と一緒に容易に飲み込むことができる。
② チュアブル錠
口の中で舐めたり噛み砕いたりして服用する剤形であり、水なしでも服用できる。
錠剤(内服)は、胃や腸で崩壊し、有効成分が溶出することが薬効発現の前提となる。
したがって例外的な場合を除いて、口中で噛み砕いて服用してはならない。特に腸内での溶解を目的として錠剤表面をコーティングしているもの(腸溶錠)の場合等は、厳に慎まなければならない。
口腔用錠剤
口腔内に適用する製剤であり、以下のものが挙げられる。
① トローチ剤、ドロップ剤
薬効を期待する部位が口の中や喉であるものが多い。飲み込まずに口の中で舐めて、徐々に溶かして使用する。
② 舌下錠
有効成分を舌下で溶解させ、有効成分を口腔粘膜から吸収させる。
散剤、顆粒剤
錠剤のように固形状に固めず、粉末状にしたものを散剤、小さな粒状にしたものを顆粒剤という。
錠剤を飲み込むことが困難な人にとっては錠剤よりも服用しやすいが、口の中に広がって歯(入れ歯を含む。)の間に挟まったり、また、苦味や渋味を強く感じる場合がある。
散剤等を服用するときは、飛散を防ぐため、あらかじめ少量の水(又はぬるま湯)を口に含んだ上で服用したり、何回かに分けて少しずつ服用するなどの工夫をするとよい。口中に散剤等が残ったときには、さらに水などを口に含み、口腔内をすすぐようにして飲み込む。また、顆粒剤は粒の表面がコーティングされているものもあるので、噛み砕かずに水などで飲み込む。
経口液剤、シロップ剤
経口液剤は、液状の剤形のうち、内服用の剤形である。固形製剤よりも飲み込みやすく、また、既に有効成分が液中に溶けたり分散したりしているため、服用後、比較的速やかに消化管から吸収されるという特徴がある。有効成分の血中濃度が上昇しやすいため、習慣性や依存性がある成分が配合されているものの場合、本来の目的と異なる不適正な使用がなされることがある。
経口液剤では苦味やにおいが強く感じられることがあるので、小児に用いる医薬品の場合、白糖等の糖類を混ぜたシロップ剤とすることが多い。
カプセル剤
カプセル剤は、カプセル内に散剤や顆粒剤、液剤等を充填した剤形であり、内服用の医薬品として広く用いられている。固形の製剤であるため、その特徴は錠剤とほぼ同様であるが、カプセルの原材料として広く用いられているゼラチンはブタなどのタンパク質を主成分としているため、ゼラチンに対してアレルギーを持つ人は使用を避けるなどの注意が必要である。また、水なしで服用するとゼラチンが喉や食道に貼り付くことがあるため、必ず適切な量の水(又はぬるま湯)とともに服用する。
外用局所に適用する剤形
軟膏剤、クリーム剤、外用液剤、貼付剤、スプレー剤等があるが、それぞれの剤形の特性が薬効や副作用に影響する。
① 軟膏剤、クリーム剤
基剤の違いにより、軟膏剤とクリーム剤に大別される。有効成分が適用部位に留まりやすいという特徴がある。一般的には、適用する部位の状態に応じて、軟膏剤は、油性の基剤で皮膚への刺激が弱く、適用部位を水から遮断したい場合等に用い、患部が乾燥していてもじゅくじゅくと浸潤していても使用できる。また、クリーム剤は、油性基剤に水分を加えたもので、患部を水で洗い流したい場合等に用られるが、皮膚への刺激が強いため傷等への使用は避ける必要がある。
② 外用液剤
外用の液状製剤である。軟膏剤やクリーム剤に比べて、患部が乾きやすいという特徴がある。また、適用部位に直接的な刺激感等を与える場合がある。
③ 貼付剤
皮膚に貼り付けて用いる剤形であり、テープ剤及びパップ剤がある。適用部位に有効成分が一定時間留まるため、薬効の持続が期待できる反面、適用部位にかぶれなどを起こす場合もある。
④ スプレー剤
有効成分を霧状にする等して局所に吹き付ける剤形である。手指等では塗りにくい部位や、広範囲に適用する場合に適している。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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