今回のテーマは、「物権変動総説」である。
物権変動とは
物権変動とは、物権の発生・変更・消滅をいい、物権の得喪及び変更ともいう。
法律行為に基づく物権変動
契約(売買・贈与・地上権設定・抵当権設定など)、単独行為(遺言・物権の放棄など)
法律行為に基づかない物権変動
時効(民法162条以下)、混同(179条)、先占(239条)、相続(896条)など
物権変動に必要な行為
物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。(176条)
「のみによって」の解釈
意思主義
物権変動を生ずるためには、意思表示のみで足り、登記や占有などほかに何らの形式を必要としないとする立法例。
- 意思表示によって物権変動が生じ、登記、引渡しによって対抗力が生じる
- 登記、引渡しは対抗要件に過ぎない(対抗要件主義)
形式主義
物権変動を生ずるためには、意思表示のほかに一定の形式・表象を必要とする立法例。
- 意思表示があっても、登記や引渡しがない限り、債権の発生にとどまり、物権変動の効果は発生しない。
- 登記、引渡しは物権変動の成立要件ないし、効力要件
民法の立場
物権変動の要件に関し、意思主義を採用している点に争いはない。
したがって、登記、引渡しは対抗要件である。
(物権の設定及び移転)
第176条 物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第177条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第178条 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
(民法)e-Gov法令検索
その他の問題
- 「意思主義」の解釈 → 物権行為の独自性の肯否
原因たる行為と物権変動の分離の有無 - 「意思主義」の解釈 → 物権行為の無因性の肯否
物権行為の原因となる行為が無効または取り消された場合、物権変動の効力にどのような影響を及ぼすか - 「その効力を生ずる」の解釈(物権変動の時期)
(参考文献)C-Book 民法II〈物権〉 改訂新版(東京リーガルマインド)
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