財産分与(4)
財産分与請求権は、離婚によって当然に発生するが、それは抽象的な権利に留まる。
当事者間の協議や家庭裁判所の審判によって具体的な内容を確定しなければならない。
なお、家庭裁判所への審判の申し立ては、離婚の時から2年以内に行われなければならない。
(第768条2項ただし書)
(財産分与)
第768条 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から2年を経過したときは、この限りでない。
3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。
(民法・e-Gov法令検索)
清算的財産分与については、現物給付が選択されることも多い。
現物給付については、夫が所有する居住用不動産を妻に譲渡するケースが多いが、分与を受けた妻は、不動産取得税及び登記時に登録免許税が課せられる。
また、分与した夫に譲渡に係る所得税が課せられる場合がある。
(最判昭和50年5月27日民集 第29巻5号641頁)
財産分与を免れるため、夫が財産の隠匿を図ることがある。
夫が自己の不動産を虚偽表示によって第三者に譲渡し、移転登記が済まされた場合、妻が将来の財産分与請求権を被保全債権として夫に代位し、その第三者に対して所有権移転登記の抹消を求めることができるかが問題となる。
このような場合には、財産分与が具体的な権利としては発生していないため、債権者代位権を行使することはできないと考えられている。(最判昭和55年7月11日 民集34巻4号628号)
他方、夫が、多重債務を抱えて、自らの財産を隠匿する目的で、財産分与を悪用するケースがある。
「分与者が既に債務超過の状態にあつて当該財産分与によつて一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」
(最判昭和58年12月19日民集第37巻10号1532頁)
財産分与は、原則として詐害行為取消の対象とはならないが、分与した財産が不相当に過大で、財産分与という形を利用してなされた財産処分といえるような特別な事情がある場合は、不相当に過大な部分については詐害行為取消の対象となりうると考えられる。
以下の最高裁判決をみてみよう。
一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意が詐害行為に該当する場合の取消しの範囲
二 離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意と詐害行為取消権
一 離婚に伴う財産分与として金銭の給付をする旨の合意は、民法768条3項の規定の趣旨に反してその額が不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情があるときは、不相当に過大な部分について、その限度において詐害行為として取り消されるべきである。
二 離婚に伴う慰謝料として配偶者の一方が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額を支払う旨の合意は、右損害賠償債務の額を超えた部分について、詐害行為取消権行使の対象となる。
(最判平成12年3月9日民集 第54巻3号1013頁)
(参考)家族法[第4版]NBS (日評ベーシック・シリーズ)日本評論社
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