解熱鎮痛薬
痛みや発熱が起こる仕組み、解熱鎮痛薬の働き
痛み・発熱の原因
痛みは病気や外傷などに対する警告信号として、また、発熱は細菌やウイルス等の感染等に対
する生体防御機能の一つとして引き起こされる症状である。ただし、月経痛(生理痛)などのよ
うに、必ずしも病気が原因とは言えない痛みもある。
プロスタグランジンはホルモンに似た働きをする物質で、病気や外傷があるときに活発に産生
されるようになり、体の各部位で発生した痛みが脳へ伝わる際に、そのシグナルを増幅すること
で痛みの感覚を強めている。また、脳の下部にある体温を調節する部位(温熱中枢)に作用して、
体温を通常よりも高く維持するように調節するほか、炎症の発生にも関与する。頭痛や関節痛
も、プロスタグランジンによって増強される。
解熱鎮痛薬
解熱鎮痛薬とは、発熱や痛みの原因となっている病気や外傷を根本的に治すものではなく、病
気や外傷が原因で生じている発熱や痛みを緩和するために使用される医薬品(内服薬)の総称で
ある。痛みのシグナルの増幅を防いで痛みを鎮める(鎮痛)、異常となった体温調節メカニズム
を正常状態に戻して熱を下げる(解熱)、又は炎症が発生している部位に作用して腫れなどの症状
を軽減する(抗炎症)ことを目的として使用される。多くの解熱鎮痛薬には、体内におけるプロ
スタグランジンの産生を抑える成分が配合されている。
月経痛(生理痛)は、月経そのものが起こる過程にプロスタグランジンが関わっていることから、解熱鎮痛薬の効能・効果に含まれているが、腹痛を含む痙攣(けいれん)性の内臓痛は発生の仕組みが異なるため、一部の漢方処方製剤を除き、解熱鎮痛薬の効果は期待できない。
解熱鎮痛成分によって、解熱、鎮痛、抗炎症のいずれの作用が中心的となるかなどの性質が異なる。
代表的な配合成分等
解熱鎮痛成分
プロスタグランジンの産生を抑制し、熱や痛みを鎮める効果がある。
成分
サリチル酸系解熱鎮痛成分
アスピリン(別名アセチルサリチル酸)、アスピリンアルミニウム、サザピリン、サリチル酸ナトリウム
- アスピリンは、他の解熱鎮痛成分に比較して胃腸障害を起こしやすく、アスピリンアルミニウム等として胃粘膜への悪影響の軽減を図っている製品もある。
- アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む。)、サザピリン及びサリチル酸ナトリウムは、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も一般用医薬品として使用してはならない。
- アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む。)は、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。
エテンザミド、サリチルアミド
- エテンザミド及びサリチルアミドについては、水痘(水疱瘡)又はインフルエンザにかかっている15歳未満の小児に対しては使用を避ける必要がある。
- エテンザミドは、痛みの発生を抑える働きが作用の中心となっている他の解熱鎮痛成分に比べ、痛みが神経を伝わっていくのを抑える働きが強い。
アセトアミノフェン
- 他の解熱鎮痛成分のような胃腸障害は少ない。
- まれに重篤な副作用として皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、急性汎発性発疹性膿庖症、間質性肺炎、腎障害、肝機能障害を生じる。
- 小児の解熱にも用いられる。
- 末梢における抗炎症作用は期待できない。
- 空腹時に服用できる製品もあるが、食後の服用が推奨されている。
イブプロフェン
- アスピリン等に比べて胃腸への悪影響が少ない。
- まれに重篤な副作用として、肝機能障害、腎障害、無菌性髄膜炎を生じることがある。
- 一般用医薬品においては、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も使用してはならない。
イソプロピルアンチピリン
- ピリン系呼ばれる解熱鎮痛成分である。
- ピリン系解熱鎮痛成分によって薬疹(しん)(ピリン疹と呼ばれる。)等のアレルギー症状を起こしたことがある人は使用しない。
- 抗炎症作用は弱いため、他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合される。
- アスピリン(アスピリンアルミニウムを含む。)には血液を凝固しにくくさせる作用もあるため、胎児や出産時の母体への影響l考慮して、出産予定日12週間以内の使用を避ける。
- サリチル酸系解熱鎮痛成分において特に留意されるべき点は、ライ症候群(主として小児が水痘(水疱瘡)やインフルエンザ等のウイルス性疾患に罹っているときに、激しい嘔吐や意識障害、痙攣等の急性脳症の症状を呈する症候群で、その発生はまれであるが死亡率が高く、生存の場合も脳に重い障害を残す等、予後は不良である。)の発生が示唆されていることである。
- 喘息については「アスピリン喘息」としてよく知られているが、これはアスピリン特有の副作用ではなく、他の解熱鎮痛成分でも生じる可能性がある。
アセトアミノフェン、カフェイン、エテンザミドの組合せは、それぞれの頭文字から「ACE処方」と呼ばれる。
鎮静成分
鎮痛作用を助ける目的で鎮静成分が配合されている。
成分
ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素
制酸成分
胃腸障害の軽減を目的として制酸成分が配合されている。
成分
ケイ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等
骨格筋の緊張を鎮める成分
成分
メトカルバモール
メトカルバモール
骨格筋の緊張をもたらす脊髄反射を抑制する作用があり、いわゆる「筋肉のこり」を和らげることを目的として、骨格筋の異常緊張、痙攣(けいれん)・疼(とう)痛を伴う腰痛、肩こり、筋肉痛、関節痛、神経痛、打撲、捻挫等に用いられる。
鎮静作用があるため、副作用として眠気、めまい、ふらつきが現れることがある。したがって、服用後は乗物又は機械類の運転操作はしない。また、鎮静成分が配合された他の医薬品の併用は避ける。
このほか、消化器系の副作用として悪心(吐きけ)・嘔(おう)吐、食欲不振、胃部不快感が現れることがある。
カフェイン類
解熱鎮痛成分の鎮痛作用を増強する効果を期待して、また、中枢神経系を刺激して頭をす
っきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげることなどを目的として配合される。
成分
カフェイン、無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェイン
※カフェイン類が配合されていても、必ずしも鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではない。
ビタミン成分
発熱等によって消耗されやすいビタミンの補給を目的として配合される。
成分
ビタミンB1(チアミン等)、ビタミンB2(リボフラビン等)、ビタミンC(アスコルビン酸等)
(参考)改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)、
登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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