禁煙補助剤
喫煙習慣とニコチンに関する基礎知識
タバコの煙に含まれるニコチンは、肺胞の毛細血管から血液中に取り込まれると、すみやかに脳内に到達し、脳の情動を司る部位に働いて覚醒、リラックス効果などをもたらす。
習慣的な喫煙により、喫煙していないと次第に体の調子が悪く感じられるようになり、血中ニコチン濃度の低下によって、イライラ感、集中困難、落ち着かない等のニコチン離脱症状(禁断症状)が現れ、喫煙習慣からの離脱(禁煙)が困難になる。
禁煙補助剤
禁煙補助剤は、ニコチン置換療法に使用される、ニコチンを有効成分とする医薬品である。
ニコチンの摂取方法を喫煙以外に換えて離脱症状の軽減を図りながら徐々に摂取量を減らし、最終的にニコチン摂取をゼロにする。
咀嚼剤
噛むことにより口腔くう内でニコチンが放出され、口腔粘膜から吸収されて循環血液中に移行する。
パッチ製剤
1日1回皮膚に貼付することによりニコチンが皮膚を透過して血中に移行する。
咀嚼剤の注意事項
- ゆっくりと断続的に噛む。
- 1度に2個以上の使用は避ける。
- 顎の関節に障害がある人では、使用を避ける。
- 口内炎や喉の痛み・腫れの症状がある場合には、口内・喉の刺激感等の症状が現れやすくなる。
禁煙補助剤の禁忌
脳梗塞・脳出血等の急性期脳血管障害、重い心臓病等の基礎疾患がある人(3ヶ月以内の心筋梗塞発作がある人、重い狭心症や不整脈と診断された人)では、循環器系に重大な悪影響を及ぼすおそれがあるため、使用を避ける必要がある。
副作用
口内炎、喉の痛み、消化器症状(悪心・嘔吐、食欲不振、下痢)、皮膚症状(発疹しん・発赤、掻痒感)、精神神経症状(頭痛、めまい、思考減退、眠気)、循環器症状(動悸き)、その他胸部不快感、胸部刺激感、顔面紅潮、顔面浮腫、気分不良などが現れることがある。
注意すべき相互作用
口腔内が酸性になるとニコチンの吸収が低下するため、コーヒーや炭酸飲料など口腔内を酸性にする食品を摂取した後しばらくは使用を避けることとされている。
ニコチンは交感神経系を興奮させる作用を示し、アドレナリン作動成分が配合された医薬品(鎮咳去痰薬、鼻炎用薬、痔じ疾用薬等)との併用により、その作用を増強させるおそれがある。
特に、使用中又は使用直後の喫煙は、血中のニコチン濃度が急激に高まるおそれがあるので、禁煙補助剤は、喫煙を完全に止めたうえ使用する。
受診勧奨
以下の診断を受けた人は、症状を悪化させる可能性があるため、禁煙補助剤を使用する前に、治療を行っている医師又は処方薬を調剤した薬剤師に相談するなどの対応が必要である。
- 心臓疾患(心筋梗塞、狭心症、不整脈)
- 脳血管障害(脳梗塞、脳出血時等)
- バージャー病(末梢血管障害)
- 高血圧
- 甲状腺機能障害
- 褐色細胞腫
- 糖尿病(インスリン製剤を使用している人)
- 咽頭炎、食道炎、胃・十二指腸潰瘍、肝臓病又は腎臓病の診断を受けた人
(参考)改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)、
登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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