滋養強壮保健薬
医薬品として扱われる保健薬
滋養強壮保健薬は、体調不良を生じやすい状態や体質の改善、特定の栄養素の不足による症状
の改善又は予防等を目的として、ビタミン成分、カルシウム、アミノ酸、生薬成分等が配合され
た医薬品である。
保健薬における医薬部外品と医薬品の違い
医薬部外品
- 効能・効果の範囲は、滋養強壮、虚弱体質の改善、病中・病後の栄養補給等に限定されている。
- 配合成分や分量は人体に対する作用が緩和なものに限られる。
医薬品
- 神経痛、筋肉痛、関節痛、しみ・そばかす等のような特定部位の症状に対する効能・効果を期待する。
- カシュウ、ゴオウ、ゴミシ、ジオウ、ロクジョウ等の生薬成分については、医薬品においてのみ認められている。
- ビタミン成分に関しても、1日最大量が既定値を超えるものは、医薬品としてのみ認められている。
ビタミン成分
ビタミンは、「微量(それ自体エネルギー源や生体構成成分とならない)で体内の代謝に重要な働きを担うにもかかわらず、生体が自ら産生することができない、又は産生されても不十分であるため外部から摂取する必要がある化合物」と定義される。これに対し、不足した場合に欠乏症を生じるかどうか明らかにされていないが、微量でビタミンと同様に働く又はビタミンの働きを助ける化合物については「ビタミン様物質」と呼ばれる。
滋養強壮保健薬の主な配合成分
脂溶性ビタミン
ビタミンD
ビタミンDは、腸管でのカルシウム吸収及び尿細管でのカルシウム再吸収を促して、骨
の形成を助ける栄養素である。
成分
エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール
- 骨歯の発育不良、くる病の予防。
- 妊娠・授乳期、発育期、老年期のビタミンDの補給。
ビタミンDの過剰症としては、高カルシウム血症、異常石灰化が知られている。
くる病
ビタミンDの代謝障害によって、カルシウムやリンの吸収が進まなくなるために起こる乳幼児の骨格異常。
高カルシウム血症
血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態で、自覚症状がないこともあるが、初期症状としては、便秘、吐きけ、おう吐、腹痛、食欲減退、多尿等が現れる。
ビタミンA
ビタミンAは、夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ。
成分
レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、ビタミンA油、肝油
- 目の乾燥感、夜盲症(とり目、暗所での見えにくさ)の症状の緩和。
- 妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時、発育期等のビタミンAの補給。
- 一般用医薬品におけるビタミンAの1日分量は4000国際単位が上限。
- ビタミンAを1日10000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた新生児において先天異常の割合が上昇したとの報告がある。
- 妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる女性及び妊娠を希望する女性では、医薬品以外からのビタミンAの摂取を含め、過剰摂取に留意する。
ビタミンE
ビタミンEは、体内の脂質を酸化から守り、細胞の活動を助ける栄養素であり、血流を
改善させる作用もある。
ビタミンEは下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与する。
成分
トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル
- 末梢血管障害による肩・首すじのこり、手足のしびれ・冷え、しもやけの症状の緩和。
- 更年期における肩・首すじのこり、冷え、手足のしびれ、のぼせ・ほてり、月経不順。
- 老年期におけるビタミンEの補給。
- 生理が早く来たり、経血量が多くなったりすることがある。この現象は内分泌のバランス調整による一時的なものであるが、出血が長く続く場合には他の原因による不正出血も考えられるため、医療機関を受診して専門医の診療を受ける。
水溶性ビタミン
ビタミンB1
ビタミンB1は、炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用がある。また、腸管運動を促進する。
成分
チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ビスチアミン硝酸塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン塩酸塩、ビスイブチアミン
- 神経痛、筋肉痛・関節痛(肩・腰・肘・膝痛、肩こり、五十肩など)、手足のしびれ、便秘、眼精疲労(慢性的な目の疲れ及びそれに伴う目のかすみ・目の奥の痛み)の症状の緩和、脚気。
- 肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB1の補給。
ビタミンB2
ビタミンB2は、脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つ。
成分
リボフラビン酪酸エステル、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビンリン酸エステルナトリウム
- 口角炎(唇の両端の腫れ・ひび割れ)、口唇炎(唇の腫れ・ひび割れ)、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび・吹き出物、肌あれ、赤ら顔に伴う顔のほてり、目の充血、目の痒みの症状の緩和。
- 肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB2の補給。
ビタミンB2の摂取により、尿が黄色くなる。
ビタミンB6
ビタミンB6は、タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素である。
成分
ピリドキシン塩酸塩、ピリドキサールリン酸エステル
- 口角炎(唇の両端の腫れ・ひび割れ)、口唇炎(唇の腫れ・ひび割れ)、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび・吹き出物、肌あれ、手足のしびれの症状の緩和。
- 妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB6の補給。
ビタミンB12
ビタミンB12は、赤血球の形成を助け、また、神経機能を正常に保つ。
成分
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン塩酸塩
- コバルトを含む
ビタミンC
ビタミンCは、体内の脂質を酸化から守る作用(抗酸化作用)を示し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。メラニンの産生を抑える。
成分
アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸カルシウム
- しみ、そばかす、日焼け・かぶれによる色素沈着の症状の緩和、歯ぐきからの出血・鼻血の予防。
- 肉体疲労時、病中病後の体力低下時、老年期におけるビタミンCの補給。
その他のビタミン成分
皮膚や粘膜などの機能を維持する。
成分
ナイアシン(ニコチン酸アミド、ニコチン酸)、パントテン酸カルシウム、ビオチン
カルシウム成分
カルシウムは骨や歯の形成に必要な栄養素であり、筋肉の収縮、血液凝固、神経機能にも関与する。
成分
クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム
- 骨歯の発育促進、妊娠・授乳期の骨歯の脆弱予防に用いられる。
カルシウムの過剰症としては、高カルシウム血症が知られている。
アミノ酸成分等
成分
システイン
- 皮膚におけるメラニンの生成を抑える。
- 皮膚の新陳代謝を活発にしてメラニンの排出を促す。
- 肝臓においてアルコールを分解する酵素の働きを助け、アセトアルデヒドの代謝を促す。
成分
アミノエチルスルホン酸(タウリン)
- 細胞の機能が正常に働くために重要な物質である。
- 肝臓機能を改善する。
成分
アスパラギン酸ナトリウム
- エネルギーの産生効率を高める。
- 骨格筋に溜まった乳酸の分解を促す。
その他の成分
成分
ヘスペリジン
- ビタミン様物質のひとつ。
- ビタミンCの吸収を助ける。
成分
コンドロイチン硫酸ナトリウム
- 軟骨組織の主成分で、軟骨成分を形成及び修復する働きがある。
- 関節痛、筋肉痛等の改善を促す作用を期待してビタミンB1等と組み合わせて配合されている。
成分
グルクロノラクトン
- 肝臓の働きを助け、肝血流を促進する。
- 全身倦怠感や疲労時の栄養補給を行う。
成分
ガンマ-オリザノール
- 米油及び米胚芽油から見出された抗酸化作用を示す。
- ビタミンE等と組み合わせて配合されている。
(参考)改訂版 この1冊で合格! 石川達也の登録販売者 テキスト&問題集 (KADOKAWA)、
登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
コメント