本稿は、「ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP検定)」の1~3級(学科試験)で出題される頻出論点をまとめたものである。
今回のテーマは、「C 金融資産運用」から「ポートフォリオ理論」である。
ポートフォリオとは
ポートフォリオとは、保有する株式、債券、不動産、商品、預貯金等の組み合わせのこと。
ポートフォリオ運用とは、分散投資によるリスク低減効果を目的とする運用方法。
期待収益率
期待収益率とは、特定の資産について、運用により得ることができると予想される平均的な収益率をいう。複数のシナリオとそのシナリオの実現しそうな確率(生起確率)を決め、それぞれの予想収益率を加重平均したもの。
期待収益率=(各シナリオの予想収益率×生起確率)の合計
分散と標準偏差
期待収益率のばらつきの大きさ(リスク)を測る尺度として、「分散」と「標準偏差」がある。
分散=$((各シナリオの予想収益率-期待収益率)^{2}×生起確率)$の合計
標準偏差=$\sqrt{分散}$
ポートフォリオの期待収益率と標準偏差
ポートフォリオ期待収益率
ポートフォリオ期待収益率は、ポートフォリオに組入れた各資産の期待収益率をポートフォリオへの組入比率で加重平均した値。
ポートフォリオの期待収益率 =(期待収益率×組入比率)の合計
ポートフォリオの標準偏差
ポートフォリオの標準偏差は、ポートフォリオに組入れた各資産の標準偏差を組入比率で加重平均した値以下となる。これが、ポートフォリオ運用によるリスク低減効果(ポートフォリオ効果)である。
相関係数
投資のリスク・・・投資によって利益や損失が発生する「不確実性」のこと。リスクが大きいとは、「不確実性が大きい」こと。反対にリスクが小さいとは、「不確実性が小さい」こと。
ポートフォリオの投資リスクを抑えるためには、異なった価格の動きをする資産などを組み合わせることが有効。ここでポイントになるのが「相関係数」である。
二つの資産間の値動きの関連性を数値化したのが「相関係数」。1からー1までの数値で表す。
- 相関係数が1・・・二つの資産がまったく同じ方向に値動きし、リスク低減効果はない。
- 相関係数が0・・・二つの資産がまったく関係ない動きをする。
- 相関係数がー1・・・二つの資産がまったく逆方向に値動きし、リスク低減効果が最大。
相関係数が1未満であれば、ポートフォリオのリスク低減効果は期待できる。
相関係数の計算
相関係数は、2資産間の共分散と、それぞれの標準偏差を用いて、以下の算式により計算できる。
A資産とB資産の相関係数=$\frac{A資産とB資産の共分散}{A資産の標準偏差×B資産の標準偏差}$
共分散とは
2資産間の収益率の関連性を示す概念である。
共分散の値が正・・・2資産間の収益率には「正の相関」がある。
共分散の値が負・・・2資産間の収益率には「負の相関」がある。
出題例
3級
(44) A資産の期待収益率が3.0%、B資産の期待収益率が5.0%の場合に、A資産を40%、B資産を60%の割合で組み入れたポートフォリオの期待収益率は、( )となる。
1) 1.8%
2) 4.0%
3) 4.2%
3級 学科試験(2023年5月28日実施)
正解:3
ポートフォリオ期待収益率
ポートフォリオ期待収益率は、ポートフォリオに組入れた各資産の期待収益率をポートフォリオへの組入比率で加重平均した値。
ポートフォリオの期待収益率 =(期待収益率×組入比率)の合計
問題に当てはめて計算すると、
3% × 40% (A資産) + 5% × 60%(B資産)= 4.2%
となる。
2級
問題 28
ポートフォリオ理論に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1.ポートフォリオのリスクは、組み入れた各資産のリスクを組入比率で加重平均した値以下となる。
2.ポートフォリオのリスクのうち、分散投資によって消去できないリスクをアンシステマティック・リスクという。
3.ポートフォリオの期待収益率は、組み入れた各資産の期待収益率を組入比率で加重平均した値よりも大きくなる。
4.国債や社債のうち、発行時に将来の利息支払額が確定する固定利付債券は、すべて安全資産(無リスク資産)に分類される。
2級 学科試験(2023年9月10日実施)
正解:1
1 正しい。
ポートフォリオのリスクは、組み入れた各資産のリスクを組入比率で加重平均した値以下となる。
2 誤り。
ポートフォリオのリスクのうち、分散投資によって消去できないリスクをシステマティック・リスクという。
3 誤り。
ポートフォリオの期待収益率は、各資産の期待収益率をポートフォリオの組入れ比率で加重平均したものである。
ポートフォリオの組入れ銘柄数を増やしても、ポートフォリオの期待収益率が組入れ銘柄の期待収益率の加重平均を上回ることはない。
4 誤り。
損失の発生しない10年ものの国債(長期国債)のほか、金融機関1つにつき1000万円以下の普通預金や現金なども無リスク資産となる。
社債は、社債発行企業などが倒産した場合などには、当該社債の元本や利息の支払いが行われない場合があり、これを「信用リスク」という。元本が保証されていないため、安全資産とはいえない。
1級
《問22》 下記の〈A資産とB資産の期待収益率・標準偏差・共分散〉から算出されるA資産とB資産の相関係数として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、計算結果は小数点以下第3位を四捨五入すること。
1) -0.44
2) -0.53
3) 0.44
4) 0.53
1級 学科試験<基礎編>(2021年9月12日実施)
正解:2
A資産とB資産の相関係数=$\frac{A資産とB資産の共分散}{A資産の標準偏差×B資産の標準偏差}$
$\frac{-70.00}{12.00×11.00}=-0.530$
-0.53
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