本稿では、民法の各分野のうち、各種資格試験の頻出テーマについて取り上げる。
今回は、「相続」から「配偶者居住権」である。
配偶者居住権
配偶者居住権とは
被相続人の配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(居住建物)の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。(民法1028条)
- 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
- 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
生存配偶者が、配偶者居住権を取得した場合、その財産的価値に相当する金額を相続したものと扱う。
例えば、被相続人Aの相続財産が、3,000万円の価値を有する自宅と預貯金3,000万円であった場合で、Aの相続人が配偶者Bと子のCであるとする。
Bが自宅を相続すると、預貯金を1円も取得できなくなり、生活が困窮する事態になりかねない。そこで、Bが配偶者居住権を取得して、その価値が1,000万円と評価された場合、Bは、配偶者居住権(1,000万円)と、2,000万円の預貯金を取得し、Cは、自宅の負担付所有権(2,000万円)と1,000万円の預貯金を取得する。
居住建物の所有者は、配偶者(配偶者居住権を取得した配偶者に限る。)に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負う。(1031条1項)
成立要件
配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していたこと。(1028条1項)
被相続人の配偶者は、相続開始時において、居住建物を被相続人と配偶者以外の者が共有していた場合にあっては、当該建物に係る配偶者居住権を取得することができない。(1028条1項柱書ただし書)
なお、被相続人と配偶者の共有建物については、配偶者居住権を成立させることができる。(1028条1項柱書ただし書の反対解釈)
存続期間
配偶者居住権の存続期間は、配偶者の終身の間とする。(1030条)
ただし、遺産の分割の協議若しくは遺言に別段の定めがあるとき、又は家庭裁判所が遺産の分割の審判において別段の定めをしたときは、その定めるところによる。(同ただし書)
効力
使用収益権の発生
配偶者は、その居住していた建物(居住建物)の全部について無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得する。(民法1028条)
そして、配偶者は、従前の用法に従い、善良な管理者の注意をもって、居住建物の使用及び収益をしなければならない。(1032条1項)
配偶者居住権の譲渡禁止
配偶者居住権は、譲渡することができない。(1032条2項)相続の対象にもならない。(1036条、597条3項)
居住建物の無断増改築の禁止等
配偶者は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築若しくは増築をし、又は第三者に居住建物の使用若しくは収益をさせることができない。(民法1032条3項)
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