民法を学ぼう!「 占有権(11)果実収取権等(2)善意占有者の果実収取権

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司法・法務

善意占有者の果実収取権

果実収取権

所有物から生じた果実は、所有者に帰属する (89条)。 しかし、 善意占有者は、占有物から生じる果実を取得できるとされている(189条1項)。 ここでいう果実には、農産物などの天然果実、賃料などの法定果実が含まれ、また、使用利益も同様に扱われる。 善意占有者が果実を取得できる理由は、多くの場合、自己の物だと信じて占有物に対して一定の労力や資本を投下しているので、返還をさせるのは酷であるからなどといわれている。

(果実の帰属)
第89条 天然果実は、その元物から分離する時に、これを収取する権利を有する者に帰属する。
2 法定果実は、これを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。
(善意の占有者による果実の取得等)
第189条 善意の占有者は、占有物から生ずる果実を取得する。
2 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなす。

未消費果実の扱い

善意占有者が収取した果実が消費されずに残存していた場合、これを回復者に返還させるべきか。学説の中には、消費されていない果実は、回復者に返還されるべきであるとする考え方もある。この考え方によれば、189条1項は、現存利益の返還を認める不当利得の規定 (703条)を確認するに過ぎない。

(不当利得の返還義務)
第703条 法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

しかし、通説は、189条1項は果実の帰属そのものを定めたものであり、善意占有者は消費されていない果実について回復者に返還する必要はないと理解する。占有者の労力・資本の投下、また、回復者の怠慢があるからである。そして、理論的に、189条1項を不当利得の特則規定と位置づける。

なお、善意占有者であっても、本権の訴えにおいて敗訴したときは、その訴えの提起の時から悪意の占有者とみなされる (189条2項)。訴えが提起された時点で、後に返還義務を負うことを覚悟しなければならないからである。

占有物の返還・損害賠償

善意占有者でも、占有物それ自体は当然に返還しなければならない。また、善意占有者が、故意・過失によって、占有物を滅失・損傷させた場合、本来的には、不法行為(709条)に基づき回復者に損害賠償(価格賠償)をしなければならない。

(不法行為による損害賠償)
第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

しかしながら、善意占有者は現存利益の範囲で賠償をすればよいとされる(191条本文)。善意占有者は、占有物を自己の物として取り扱っており、他人の物として取り扱っていないため、占有物を慎重に扱うように要求できない。善意占有者保護のため、賠償義務が軽減されている。ここでいう滅失には、物理的滅失だけでなく、紛失などの場合も含まれる。損傷には、物理的損傷だけでなく、占有物の過度な利用などによる価値下落も含まれる。

(占有者による損害賠償)
第191条 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときは、その回復者に対し、悪意の占有者はその損害の全部の賠償をする義務を負い、善意の占有者はその滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において賠償をする義務を負う。ただし、所有の意思のない占有者は、善意であるときであっても、全部の賠償をしなければならない。

なお、他人の物として占有している者 (他主占有者)は、善意であってもこのような保護を受けられず、悪意占有者と同様に扱われる。もともと他主占有者は、占有物の返還義務を負っているからである。

参考)物権法[第3版] NBS (日評ベーシック・シリーズ) 日本評論社


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