今回のテーマは、「債務不履行」である。
それでは、「管理業務主任者試験」で出題された民法の過去問にチャレンジしてみよう。
令和2年度 管理業務主任者試験問題【問6】
【問 6】
マンションの管理組合Aとマンション管理業者Bとの間の管理委託契約が、Aの責めに帰する事由がなく、Bの債務不履行を理由として解除された場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aは、この解除の意思表示を撤回することができない。
2 AB間の管理委託契約の解除により、Bが、Aに対して、受領した金銭を返還する義務を負う場合は、Bは受領した金額を返還すればよく、利息を付する必要はない。
3 Bの債務の全部が履行不能である場合には、それについてBの責めに帰する事由がないときでも、Aは直ちに管理委託契約を解除することができる。
4 Bの債務の履行不能が一部である場合であっても、残存する部分のみでは契約の目的を達することができないときは、Aは契約の全部を解除することができる。
令和2年度 管理業務主任者試験問題
正解:2
それでは、各肢を検討していこう。なお、法令等は、令和4年4月1日現在で施行されているものによるものとする。
1 正しい。
解除の意思表示は、撤回することができない。(540条2項)
したがって、Aは、この解除の意思表示を撤回することができない。
(解除権の行使)
第五百四十条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
2 前項の意思表示は、撤回することができない。
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2 誤り。
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。(545条1項本文)この場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。(同条2項)
したがって、Bは受領した金額を返還するほか、利息を付さなければならない。
(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
(略)
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3 正しい。
債権者は、債務の全部の履行が不能であるときは、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。(542条1項1号)この場合、事由は不要である。
したがって、本肢の場合、Bの責めに帰する事由がないときでも、Aは直ちに管理委託契約を解除することができる。
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
(略)
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4 正しい。
債権者は、債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。(542条1項3号)
したがって、本肢の場合、Aは契約の全部を解除することができる。
(催告によらない解除)
第五百四十二条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる
(略)
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
(略)
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