本ブログでは、多くの資格試験で出題されることが多い民法をテーマのひとつとして取り上げている。様々なアプローチがあるが、民法の基本テキストを読み込むことは基本のひとつであろう。すでに民法のテキストはご紹介しているところである。民法を読もう(民法総則[第2版] NBS (日評ベーシック・シリーズ)
しかし、まだまだご紹介したい書籍がある。今回ご紹介するのは、「民法の基礎1 総則 第5版 佐久間毅著(有斐閣)以下本書という」である。
民法の基礎1 総則 第5版
著者の佐久間毅先生は、現在、同志社大学大学院司法研究科教授であられる。(同志社大学法科大学院の紹介のページ」
具体的事例から法律論を通じて,その展開の方法を示した好評の基本書。学部講義用テキストとしてはもちろん,法科大学院などの教材,自主学習用の教科書としても好評の1冊。2020年4月の民法(債権法)改正の施行にともない,施行後の解説を基本とした全面改訂版。
有斐閣
民法は、言うまでもなく法律である。その条文は誰でもすぐに参照できる。→民法|e-Gov法令検索
ただし、初学者にとって、「案内書」を持たずに民法の世界に踏み込むのは、「地図」をもたずに山に分け入るようなものである。もちろん、山は誰でも入れるが、「地図」という指針があれば安全に行動できる。筆者は、法律書の存在をこのように考えている。そして、現在の学術的な到達点を知ることもできる。資格試験では、理屈抜きで結論を覚えるほうが良いというアドバイスがある。ある意味合理的だが、民法については、ある程度背景を知っておいたほうが良いと思われる。実務でも頻繁にその知識が必要になるので、民法の「基礎」はしっかりとしておいたほうが後々のためでもある。
「総則」の書籍のなかには、民法の条文順に記載してあり、専門用語がいきなり出てきて、その説明が延々続いていくものもある。初学者がつまずきやすい点である。
本書では、民法典とは異なる順序で説明してあり、また説明を省略しているものもある。
すべては、わかりやすさのための配慮であろう。
さて、第1章は、民法及び民法総則についての概説である。本書の話題の中心は第2章からとなる。まずは、「人」の「権利能力」についてである。始期と終期、失踪宣告が扱われている。
意思能力および行為能力については、続く「法律行為」で説明している。この章は大部で、本書の大半を占めている。その後、「法人」、「時効」についての説明が続いていく。なお、「物」についての説明は本書では省略されている。これは重要ではないからでなく「物権法」で説明されることになっている。
本書は、タイトルこそ「基礎」とはなってはいるが、実際は応用まで含まれるので、実際初学者には読みこなしはたいへんかもしれない。著者も触れているように初学者は、「本文」のみを通読されるといいだろう。それだけでも読みこなすことができればかなりの実力がつくことだろう。
各所に配された「用語解説」も初学者には役立つコラムとなっている。
なお、本文(と発展学習)は、基本的に条文、判例及び学説の通説に基づき説明されている。
本書にはのちの分野の知識が必要な箇所もあるが、とにかく読み通してみよう。「総則」では、のちの分野でも必要な前提知識がたくさん含まれている。「民法」の旅は、「総則」で始まったばかりである。「総則」をじっくりと読み込んでいくことが、民法全体の理解につながるのである。
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