本稿は、「ファイナンシャル・プランニング技能検定(FP検定)」の1~3級(学科試験)で出題される頻出論点をまとめたものである。
今回のテーマは、「B リスク管理」から「地震保険」である。
地震保険
地震保険の補償対象
地震保険は、火災保険に付帯して契約するもので、単独では契約できない。
地震、噴火、津波による火災・損壊・埋没・流失損害を補償する。
地盤液状化により建物が傾斜した場合でも、一定の要件を満たせば補償対象になる。
対象は、居住用建物(店舗併用住宅は可)及びその収容動産(家財に限定)。
なお、居住用建物であれば、建築中でも地震保険を付帯できる。
自動車や1個または1組の価額が30万円を超える貴金属・宝石等は家財の対象にならない。
保険期間
火災保険の保険期間の途中から地震保険を付帯することも可能である。
火災保険の契約申込書では地震保険は原則付帯とされており、地震保険を希望しない場合には、その旨の確認印またはサインが必要である。
新たに契約する火災保険の保険期間が5年である場合、付帯して契約する地震保険の保険期間は1年の自動継続または5年のいずれかを選択する。
保険料
地震保険の保険料は、建物の構造(イ構造、ロ構造の2区分)及び所在する都道府県による等地区分は3区分で異なり、保険会社による差異はない。要件を満たせば割引率の適用がある。(重複適用不可)
- イ構造:耐火性能および準耐火性能を有する建物
- ロ構造:イ構造以外の建物
割引の種類 | 割引率 | 割引の適用条件 |
---|---|---|
免震建築物割引 | 50% | 住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」)に基づく免震建築物である場合 |
耐震等級割引 | 耐震等級3:50% 耐震等級2:30% 耐震等級1:10% | ・品確法に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している場合 ・国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有している場合 |
耐震診断割引 | 10% | 地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たしている場合 |
建築年割引 | 10% | 昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合 |
等級 | 具体的な性能 |
---|---|
等級3 | 極めてまれに(数百年に1回程度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度 |
等級2 | 極めてまれに(数百年に1回程度)発生する地震による力の1.25倍の力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度 |
等級1 | 極めてまれに(数百年に1回程度)発生する地震による力に対して建物が倒壊、崩壊等しない程度 ⇒建築基準法がすべての建物に求めている最低基準 |
保険金額
保険金額については、火災保険の保険金額の30~50%の範囲内(ただし、居住用建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度)で設定することとされている。
(参考)地震保険基準料率(損害保険料率算出機構のWebサイト)
保険金の支払対象
保険金の支払い対象として、72時間以内に生じた2以上の地震等は、被災地域がまったく重複しない場合を除き、1回の地震等とみなされる。
地震等の発生した日の翌日から10日を経過した後に生じた損害は対象外となる。
支払われる保険金
迅速な保険金支払いの観点から、居住用建物または家財に生じた損害が、全損(100%)、大半損(60%)、小半損(30%)、一部損(5%)のいずれかに該当する場合に、保険金が支払われることとされている。また、建物の損害は主要構造部(壁、柱、床など)の損害により判定される。
(参考)地震保険基準料率(損害保険料率算出機構のWebサイト)
保険金の支払い限度額
政府による再保険
- 地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し、再保険料の受入れ、管理・運用のほか、民間のみでは対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計において区分経理している。
- 1回の地震等により政府が支払うべき再保険金の総額は、毎年度、国会の議決を経た金額を超えない範囲内のものでなければならないとされている。
- 現在、その金額は11兆7,713億円であり、民間保険責任額と合計した1回の地震等による保険金の総支払限度額は12兆円である。
(参考)地震保険制度の概要(財務省のWebサイト)
出題例
3級
(38) 地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の( ① )の範囲内で設定することになるが、居住用建物については( ② )、生活用動産(家財)については1,000万円が上限となる。
1) ① 30%から50%まで ② 3,000万円
2) ① 30%から50%まで ② 5,000万円
3) ① 50%から80%まで ② 5,000万円
2022年9月試験 学科 3級【第2問】
正解:2
保険金額については、火災保険の保険金額の30~50%の範囲内(ただし、居住用建物は5,000万円、家財は1,000万円が限度)で設定する。
2級
問題 16
火災保険および地震保険の一般的な商品性に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1.地震保険は、火災保険の契約時に付帯する必要があり、火災保険の保険期間の中途で付帯することはできない。
2.地震保険の保険料には、「建築年割引」、「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」の割引制度があるが、これらは重複して適用を受けることはできない。
3.保険始期が2017年1月1日以降となる地震保険における損害の程度の区分は、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」である。
4.専用住宅を対象とする火災保険の保険料を決定する要素の1つである建物の構造級別には、「M構造」「T構造」「H構造」の区分がある。
2級 学科試験(2023年1月22日実施)
正解:1
1 誤り。
地震保険は単独で加入することはできず、必ず火災保険に付帯して加入する。なお、中途付帯も可能である。
2 正しい。
地震保険の保険料には、「建築年割引」、「耐震等級割引」、「免震建築物割引」、「耐震診断割引」の4種類の割引制度があるが、これらは重複して適用を受けることはできない。
3 正しい。
損害の程度によって「全損」「大半損」「小半損」「⼀部損」の認定を行い、それぞれ地震保険金額の100%・60%・30%・5%が支払われる。(平成29年(2017年)1月1日以降保険始期の地震保険契約の場合)
4 正しい。
住宅を対象とする火災保険の保険料は、建物の構造級別と所在地(都道府県別)によって算定される。
建物の構造級別として「M構造(マンション構造)」「T構造(耐火構造)」「H構造(非耐火構造)」の区分がある。
1級
《問14》 地震保険に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1) 地震保険では、72時間以内に生じた2以上の地震等は、被災地域がまったく重複しない場合を除き、一括して1回の地震等とみなされる。
2) 地震保険は、火災保険に原則自動付帯となっているが、契約者が地震保険を付帯しないことの意思表示をした場合は、付帯しないことができる。
3) 地震保険では、1回の地震等により支払われる保険金の額にかかわらず、支払われる保険金の総額の2分の1を民間(各損害保険会社および日本地震再保険株式会社)が負担し、残りの2分の1を政府が負担する。
4) 地震を原因とする地盤液状化により、地震保険の対象である木造建物が傾斜した場合、傾斜の角度または沈下の深さにより一定の損害が認定されれば、保険金が支払われる。
1級 学科試験<基礎編>(2023年9月10日実施)
正解:3
1 正しい。
地震保険では、72時間以内に生じた2以上の地震等は、被災地域がまったく重複しない場合を除き、一括して1回の地震等とみなされる。
2 正しい。
地震保険は、火災保険に原則自動付帯となっているが、契約者が地震保険を付帯しないことの意思表示をした場合は、その旨の確認印またはサインが必要となる。
3 誤り。
- 地震等による被災者の生活の安定に寄与することを目的として、民間保険会社が負う地震保険責任を政府が再保険し、再保険料の受入れ、管理・運用のほか、民間のみでは対応できない巨大地震発生の際には、再保険金の支払いを行うために地震再保険特別会計において区分経理しています。
- 1回の地震等により政府が支払うべき再保険金の総額は、毎年度、国会の議決を経た金額を超えない範囲内のものでなければならないとされています。
(参考)政府による再保険(財務省のWebサイト)
したがって、地震保険では、1回の地震等により支払われる保険金の額にかかわらず、支払われる保険金の総額の2分の1を民間(各損害保険会社および日本地震再保険株式会社)が負担し、残りの2分の1を政府が負担するわけではない。
4 正しい。
(3)「地震等」を原因とする地盤液状化による損害の認定基準
木造建物(在来軸組工法、枠組壁工法)、共同住宅を除く鉄骨造建物(鉄骨系プレハブ造建物等の戸建住宅)の場合、地盤液状化による建物の「傾斜」または「最大沈下量」に着目して被害程度を調査し、地盤液状化による損害の認定基準(表5 )を基に全損、大半損、小半損、一部損の認定を行います。
(引用)地震保険ご契約のしおり(2022年10月改定版)(日本損害保険協会Webサイト)
地震を原因とする地盤液状化により、地震保険の対象である木造建物が傾斜した場合、傾斜の角度または沈下の深さにより一定の損害が認定されれば、保険金が支払われる。
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