I 人体の構造と働き(8)
2 目、鼻、耳などの感覚器官
外界における種々の現象を刺激として、脳に伝えるための器官である。可視光線を感じる視覚器(目)、空気中を漂う物質の刺激を感じる嗅覚器(鼻)、音を感じる聴覚器(耳)等、それぞれの感覚器は、その対象とする特定の感覚情報を捉えるため独自の機能を持っている。
1)目
視覚情報の受容器官で、明暗、色及びそれらの位置、時間的な変化(動き)を感じとる眼球と、眼瞼、結膜、涙器、眼筋等からなる。顔面の左右に1対あり、物体の遠近感を認識することができる。
(a) 眼球
頭蓋骨のくぼみ(眼窩)に収まっている球形の器官で、外側は、正面前方付近(黒目の部分)のみ透明な角膜が覆い、その他の部分は強膜(白目の部分)という乳白色の比較的丈夫な結合組織が覆っている。
紫外線を含む光に長時間曝されると、角膜の上皮に損傷を生じることがある(雪眼炎。雪目ともいう。)。
角膜と水晶体の間は、組織液(房水)で満たされ、眼内に一定の圧(眼圧)を生じさせている。
透明な角膜や水晶体には血管が通っておらず、房水によって栄養分や酸素が供給される。
水晶体の前には虹彩があり、瞳孔を散大・縮小させて眼球内に入る光の量を調節している。
水晶体から網膜までの眼球内は、硝子体という透明のゼリー状組織で満たされている。
光の入り方
角膜に射し込んだ光は、角膜、房水、水晶体、硝子体を透過しながら屈折して網膜に焦点を結ぶが、主に水晶体の厚みを変化させることによって、遠近の焦点調節が行われている。
水晶体は、その周りを囲んでいる毛様体の収縮・弛緩によって、近くの物を見るときには丸く厚みが増し、遠くの物を見るときには扁平になる。
網膜には光を受容する細胞(視細胞)が密集していて、視細胞が受容した光の情報は網膜内の神経細胞を介して神経線維に伝えられる。網膜の神経線維は眼球の後方で束になり、視神経となる。
視細胞には、色を識別する細胞と、わずかな光でも敏感に反応する細胞の二種類がある。
後者が光を感じる反応にはビタミンAが不可欠であるため、ビタミンAが不足すると夜間視力の低下(夜盲症)を生じる。
(b) 眼瞼、結膜、涙器、眼筋
【眼瞼(まぶた)】
眼球の前面を覆う薄い皮膚のひだで、物理的・化学的刺激から目を防護するほか、まぶしいとき目に射し込む光の量を低減させたり、まばたきによって目の表面を涙液で潤して清浄に保つなどの機能がある。
上下の眼瞼の縁には睫毛(まつげ)があり、ゴミや 埃等の異物をはじいて目に入らないようにするとともに、物が触れると反射的に目を閉じる触毛としての機能がある。
眼瞼は、素早くまばたき運動ができるよう、皮下組織が少なく薄くできているため、内出血や裂傷を生じやすい。また、むくみ(浮腫)等、全身的な体調不良(薬の副作用を含む)の症状が現れやすい部位である。
【結膜】
眼瞼の裏側と眼球前方の強膜(白目の部分)とを結ぶように覆って組織を保護している。
薄い透明な膜であるため、中を通っている血管が外部から容易に観察できる。
目の充血は血管が拡張して赤く見える状態であるが、結膜の充血では白目の部分だけでなく眼瞼の裏側も赤くなる。強膜が充血したときは、眼瞼の裏側は赤くならず、強膜自体が乳白色であるため、白目の部分がピンク味を帯びる。
【涙器】
涙液を分泌する涙腺と、涙液を鼻腔に導出する涙道からなる。
涙腺は上眼瞼の裏側にある分泌腺で、血漿から涙液を産生する。
涙液の主な働きとしては、
(1) ゴミや埃等の異物や刺激性の化学物質が目に入ったときに、それらを洗い流す。
(2) 角膜に酸素や栄養分を供給する。
(3) 角膜や結膜で生じた老廃物を洗い流す。
(4) 目が鮮明な視覚情報を得られるよう角膜表面を滑らかに保つ。
(5) リゾチーム、免疫グロブリン等を含み、角膜や結膜を感染から防御する。
涙液は起きている間は絶えず分泌されており、目頭の内側にある小さな孔(涙点)から涙道に流れこんでいる。涙液分泌がほとんどない睡眠中や、涙液の働きが悪くなったときには、滞留した老廃物に粘液や脂分が混じって眼脂(目やに)となる。
【眼筋】
眼球を上下左右斜めの各方向に向けるため、6本の眼筋が眼球側面の強膜につながっている。
眼球の動きが少なく、眼球を同じ位置に長時間支持していると眼筋が疲労する。
目を使う作業を続けると、眼筋の疲労のほか、遠近の焦点調節を行っている毛様体の疲労や、周期的まばたきが少なくなって涙液の供給不足等を生じ、目のかすみや充血、痛み等の症状(疲れ目)が起こる。
こうした生理的な目の疲れではなく、メガネやコンタクトレンズが合っていなかったり、神経性の疲労(ストレス)、睡眠不足、栄養不良等が要因となって、慢性的な目の疲れに肩こり、頭痛等の全身症状を伴う場合を眼精疲労という。
(参考)
・登録販売者試験問題作成に関する手引き(令和7年4月)
・ズルい!合格法シリーズ ズルい!合格法 医薬品登録販売者試験対策 鷹の爪団直伝!参考書 Z超 株式会社医学アカデミーYTL(著)薬ゼミ情報教育センター
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