民法を学ぼう「権限外の行為の表見代理」

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民法 司法・法務

続いての表見代理は、民法110条が定める「権限外の行為の表見代理」である。

これは、ある事柄について代理権を与えられている代理人が、それとは異なる事柄について代理行為をした場合に問題となる。

この場合、相手方から見て、代理人に当該行為をする権限があると「信ずべき正当な理由があるとき」には、表見代理が成立し、本人に効力が及ぶとされる。(民法110条)

民法110条の要件

110条の要件は、①代理人が代理権(基本代理権)を有していたこと、②相手方が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があることである。

①基本代理権

110条が、「代理人が」と規定しているので、無権代理行為を行った者が、何らかの代理権を有していることを要件としている。しかも、無権代理行為として行われた行為とは、異なる事柄について代理権が与えられていたことが必要である。

②正当な理由

さらに、110条は、相手方が代理人の権限があると信ずべき「正当な理由」があることが必要だとしている。

判例によれば、この「正当な理由」とは、無権代理人が当該行為について代理権を有していないことについて、相手方が善意無過失であることをさすとされている。(最判昭和44.6.24判時570号48頁)

例えば、本人の実印を使っていたとか、相手方との間で以前に有効な代理行為をしていたことがあるなどの場合は、「正当な理由」が認められる。

反対に、この取引に「不審事由」ー代理権がないのではないかと疑いを生じさせる事由ーがある場合は、「正当な理由」を簡単に認めることはできない。
このような場合、相手方は、本人に問い合わせるなど、調査・確認を行うべきとされ、これを怠ったときには、過失が認められ、「正当な理由」がないと判断される。

「不審事由」の例としては、委任状に改ざんの跡が見られる場合、百均で買ったような三文判が使われた場合などがある。

(代理権授与の表示による表見代理等)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
2 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。
(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

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参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版(東京リーガルマインド)

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