民法を学ぼう「代理権授与の表示による表見代理」

スポンサーリンク
司法・法務

代理権授与の表示の典型的な場合(民法109条1項)

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。(109条本文)

「第三者」は、代理権授与の表示を受けた無権代理行為の直接の相手方に限られる

ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、表見代理は成立しない。(同項ただし書き)

表示された代理権の範囲を超える場合(民法109条2項)

第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば109条1項の責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う。

白紙委任状の交付と代理権授与表示

白紙委任状とは

本人が、代理人に交付する委任状において、代理人の氏名を書く欄(代理人欄)や、代理人の権限の内容を書く欄(委任事項欄)など、一部を記載しないままの空欄にしてあるものをいう。

白紙委任状をめぐっては、本人が意図していた通りに空欄が補充されず、それに基づいて、本人が意図していない代理行為が行われることがある。これが白紙委任状の濫用である。

白紙委任状と109条

例えば、本人(A)が、相手方(C)から、3千万円を借り、この担保として、Aの所有する甲土地に抵当権を設定することとした。Aはこの手続きをBに代理させることとし、Bに対して、代理人欄が空欄で、「甲土地に抵当権を設定する一切の権限を与える」と記載されている白紙委任状を交付した。

ところが、Bは、この抵当権設定の手続きを行わず、この白紙委任状を知人のDに交付した。
Dは、この白紙委任状を悪用し、自分がCから五千万円を借り入れ、これを担保するためにAの所有する甲土地に抵当権を設定する契約を結んだ。

このケースでは、この白紙委任状により、Aが、Cに対し、Dに代理権を与えた旨を表示しているとみることができる。

このため、109条が適用され、Cの善意無過失を要件として、表見代理が成立し、Aは、Dの行った抵当権を設定する行為を無権代理により無効だと主張できなくなる。

参考文献)民法総則「第2版」 原田 昌和 他著 (日本評論社)、C-Book 民法I〈総則〉 改訂新版(東京リーガルマインド)

コメント

タイトルとURLをコピーしました